Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

今、蘇る国鉄〜音の旅〜

鉄道マニアには読んで字のごとくの“乗り鉄”“模型鉄”だけでなく、写真専門の“撮り鉄”、音声音響専門の“音鉄”などがいるとは聞いていたが……。昭和45年に国鉄が個人旅行の拡大を狙って打ち出した“ディスカヴァー・ジャパン”キャンペーンの勢いを借り、コロムビアの録音技術者たちが自ら電車に乗って録音した当時の駅や車内のアナウンス、走行音、駅弁の売り子の声などを初CD化。マニア垂涎、シロウト唖然……の三枚組。おおむね路線に沿った順序で収録されているので、昭和の日本を旅しているような郷愁にもひたれる。長閑。

【CDジャーナル 2010年05月号掲載】

九月に降る風

真夜中に忍び込む学校のプール。授業を抜け出しての酒やタバコ。野球とバイクとセックスと、喧嘩と友情と恋愛と──。舞台は90年代後半の台湾だが、国や時代が変わっても、男子高校生の興味や悩みは変わらない。7人の悪ガキたちの青春を描く本作、女子向けの作品かと思いながら見始めたが、けっこう骨太で男子向けだった。登場する誰かに自分の昔を重ねて共感する男子は多いはず。原題の“九降風”は台湾の9月の季節風で、日本の桜のように、卒業と入学、別れや出会いを暗示している。定型化した様式美だが、それでも切なく、ほろ苦い。

【CDジャーナル 2010年05月号掲載】

女の子ものがたり

エロ本出身にして今は善人顔で毎日新聞に子育て漫画を連載する漫画家、西原理恵子。彼女には、二つの乖離した作風がある。一つが博打アリ脱税アリの無頼派としての作品群で、もう一つは、彼女が育った貧しい漁村をイメージさせる、弱い人間たちの叙情詩。本作は後者のうち一つの実写映画化。男は漁師、女は水商売という田舎町で生まれ育つ少女3人の成長を描く。美談ではない。少女特有の残酷さや、田舎者の厚顔無恥をそのまま画面に押し広げる。それでも爽快なのは、原作者も演者も、格好つけずに人間の弱さをさらけ出しているから。

【CDジャーナル 2010年04月号掲載】

ディア・ドクター

『ゆれる』と同様、西川監督、人の心の中の本音と建前の混在や、その微妙な移り変わりを描くのがうまい。見渡す限りの山と田畑、住民の半分が老人という僻村が舞台。みなから信頼され親しまれる村唯一の医者、伊野。都会でくらす娘を気づかう老いた母親、かづ子。この二人、ともにある嘘をついていた。伊野は実はニセ医者で、かづ子は──。伊野が突然姿を消したことから物語は始まり、時間軸を前後しつつ、小さな村の大事件を丁寧に描く。僻地医療という難題をベースにしながらも、仕上がりは上品かつコミカルで、脇役陣も実に巧み。

【CDジャーナル 2010年03月号掲載】

ナイトミュージアム2

誰もいない夜の博物館では、魔法の石版の力により、すべての展示物が命を持って動き出す──2006年の大ヒット作の続編。今回は舞台を巨大なスミソニアン博物館に移し、登場キャラも倍増。化石の恐竜や騎兵隊、古代エジプト王にモアイ像、はてはダース・ベイダーまでが命を得て蘇り、縦横無尽に画面を走り回る。この感覚は何かに似ているなあと思ったら、子どものころボロボロになるまで読み返した“飛び出す絵本”だ。話の内容よりも、ページをめくるごとに飛び出してくる“視覚効果”にワクワクしてた。前作にはなかったロマンスの要素も挿入、それを盛り上げるのが“歌うキューピット隊(の石像)”で、場面に合わせ賛美歌からヒップポップまで熱唱しやがるのに苦笑。家族団欒向けの佳作だ。

【CDジャーナル 2010年02月号掲載】

ドゥームズデイ

2008年、謎の死のウィルスがスコットランドで猛威をふるう。政府は救済を断念、該当地域を高い塀で囲い、武力で被災者を封じ込める。つまりは見殺しにしたのだ。しかし27年後、今度は首都ロンドンでウィルスが発生。ワクチンを探す特命を受けた特殊部隊が“塀の中”に侵入するが、彼らが目にしたのは、27年を生き延びた“生き残り”たちの、極度に凶暴化した社会だった──。中世に近未来、パンクやゴスなどを混ぜ合わせた衣装や舞台が見物。殺戮やアクションの描写もエグいが斬新。だが全体的に“感覚”優先で“理論”は後回しの印象。“見捨てられた人間の社会”というせっかくの興味を惹く設定だ、アクションを少々削っても、その凶暴化の歴史や日常生活などを丁寧に描いて欲しかった。

【CDジャーナル 2010年02月号掲載】

Noriyuki Makihara 20th Anniversary Best LOVE / LIFE

デビュー20周年を記念した本人監修のベスト盤。 21歳でデビューした頃の“ラブ”と、40歳になった(2010年当時)今の“ライフ”、槇原が葛藤しながら大切にしているものが選曲からも伝わってくる。セルフライナーが槇原らしい素直さで、“「SPY」は残念ながら実話”“「No.1」のチョコレート工場は実家近くの明治製菓”など、楽曲のオリジンが惜しげなく披露され、ファンには貴重。今回合計7曲がリアレンジされたが、中でも隠れた名曲「LOVER LETTER」は原曲よりもヴォーカルを前面に出したぶんノスタルジックな情感が増し、秀逸。

【CDジャーナル 2010年01月号掲載】