Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

娼年

冒頭からの激しいセックス描写におののくが、しだいにその激しさは主人公が抱える空虚の裏返しだと分かる。おそらくは、無性愛者が持つ空虚──石田衣良が原作を出した2001年には無性愛という日本語すらなかったはずだが。それを見透かした女の誘いで、リョウ(松坂桃李)は年嵩の女たちに体を売り始める。撫でる、舐める、なぶる、咥えさせる。だが空虚は埋まらない。芸術か猥褻かと問われれば完全に猥褻寄りなのに、不思議と劣情はもよおさない。性を剥き出しにした人間の業の深さが勝っているからだと思う。

【CDジャーナル 2018年10月号掲載】

ジーサンズ はじめての強盗

長年の工場勤めを終え、隠居したはずのジーサン3人組。身勝手な企業や銀行の都合で年金は打ち切り、家まで失いそうに。3人は意を決し、なんと銀行強盗に挑むことに──。主演の3人組がモーガン・フリーマンマイケル・ケインアラン・アーキンと全員オスカー俳優で、プラス『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクことクリストファー・ロイドがいい味のボケ老人を演じる。劇中の老人の洒脱な雰囲気とともに、老優それぞれの人生を重ね見て、「こんなジーサンになりたい!」と思わされる軽快で小粋なコメディ。

【CDジャーナル 2017年12月号掲載】

ザ・マミー / 呪われた砂漠の王女

ロンドンで十字軍の巨大な地下墓地が、中東では古代エジプト王女の呪われたミイラが発見され──。米国ではホラーからコメディまでなぜかここ何十年もゾンビ映画の人気が続いているが、その流れをトム・クルーズがオレ様流にアレンジ、インディ・ジョーンズ的な偽歴史も織り込んだ一大スペクタクルに。もちろんお得意のアクションも全開。ユニバースは今後過去のさまざまな有名モンスター作品をリメイクしていくそうで、その“ダーク・ユニバース”プロジェクトの第一弾となる本作は1932年の『ミイラ再生』が元ネタ。

【CDジャーナル 2017年12月号掲載】

この世界の片隅に

“男目線”で怒号や爆撃音を響かせる戦争映画とは異なり、“女こども”の目線でその後ろに地続きにあった人々の生活を描いている点で、『火垂るの墓』を思い重ねる人も多いだろう。絵を描くことだけが得意でどこかボンヤリしており、18歳で広島から軍港の街・呉に嫁いだ主人公・すずの目を通して物語はつづられる。画風は淡々としているが漫画原作者こうの史代、監督・脚本の片渕須直ともに膨大な量の戦時資料にあたっており、人々の生活や軍艦の動向など、かなり正確。しかし強き者が掲げる“正義”や“国の尊厳”は是とも非ともせず、ただその背後にいた弱き者たちの静かな日常を、丁寧な色合いで表現した。「非常時のために床下に備蓄しておいた芋が、空襲でいい具合に焼けたから食べよう」という短いシーンなど、秀逸。作者が意図しているかどうかは分からないが、ラスト数シーンは、『火垂るの墓』で味わったやるせなさに対するひとつの救いの提示であるように感じる。

【CDジャーナル 2017年11月号掲載】

マンチェスター・バイ・ザ・シー

人は本当に悲しいとき、泣くまでに時間がかかる。兄の死により甥の後見人に指名され、事情があって離れていた故郷に戻る男。甥である少年はまだ十代で、バンド活動や女の子にうつつを抜かし、父の死に傷ついてい様子はない──が、実はそれはまだ幼すぎて、悲しみに対応しきれていないだけ。そしてそれは主人公も同じだった。逃げているだけで、何も乗り越えていない大人──。『インターステラー』のC・アフレックが抑制された演技でアカデミー主演男優賞、監督のK・ロナーガンが脚本賞を受賞。静かな感動。

【CDジャーナル 2017年11月号掲載】

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

間違ってもアベンジャーズX-MENには入れない、マーベル戦隊オチャラケ部門の荒くれ者チーム。その一員、アライグマのスーパーヒーロー(!)がちょっとした盗みを働いたことから、一同はうっかり銀河を破滅から救うハメに──。リアリティなどはなから無視した、チープでキッチュな絵づくり、毒々しい色彩。シリーズ2作目で一応前作からの伏線もあるのだが、気にしなくていい。星であり神である父親の出現って、なんじゃそら(笑)。田舎の寂れたゲームセンターにも似た、郷愁のような味わいの極彩色SF。

【CDジャーナル 2017年10月号掲載】

エイミー、エイミー、エイミー!

米国の人気コメディエンヌ、エイミー・シューマーが製作・脚本、さらには自身を投影した同名の主人公エイミー役を演じる。三十を過ぎて恋人はいても一夜限りの男遊びは別腹の彼女が、ある外科医との出会いで奔放な自分を反省するが──。けっこうな激しさのSEXシーンは多いのに、女性はほとんど肌を見せない。というか、はなから女を魅力的に見せようとなどしてなくて、そのかわりにマッチョなメンズがやたらと脱ぐ。どこか漂うトホホ感が楽しい。監督が『40歳の童貞男』のJ・アパトーだというのがこれまたね。

【CDジャーナル 2017年10月号掲載】