Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-12から1日間の記事一覧

誰も知らない

小さな2DKのアパートに置き去りにされた4人の兄妹の物語である。それぞれ父親の違う4人は、出生届も出されておらず、学校にも行かせてもらえない。だが当初描かれるのは、そう聞いて思い浮かぶような荒れた家庭ではない。引っ越しの日にはみんなでソバを食…

マーク・ニューソン

自分で飛行機を作ってみたい、車を作ってみたい、NIKEのシューズを作ってみたい──いかにも男の子が持ちそうな夢を、大人のくせに全部実現した人がいる。マーク・ニューソンという製品デザイナーで、今話題の携帯電話“talby”を作ったのもこの人だ。その主要作…

スイミング・プール

そろそろ老年にさしかかる堅物の女流作家が、南仏の別荘で出会った自由奔放な小娘。開放的なリゾート地でも禁欲的な生活を続けようとする作家は、小娘が次々と男を連れ込んでくるのに苛立ちつつも、その若さの中にいつしか作品のインスピレーションを得るよ…

SONNY / ソニー

ゆるく退廃的な空気の漂うニューオリンズに、兵役を終えた一人の若者が帰ってくる。彼は12歳のときから母親に技術を叩き込まれた、名うての男娼。娼婦として老いていくしかない母親を横に見ながら、若者はそんな生活と決別しようともがく。しかし世の中は彼…

スパイダーマン2

サム・ライミ監督、やりたい放題である。ロマンスにホラー、アクション、コメディと、127分の中にぶち込めるだけの要素をぶち込んできた。かなりの破天荒に思えた前作も、今思えばまだ遠慮があったのかもしれない。中でも今回強調されるのが主人公の“苦悩す…

エレファント

1999年4月20日にコロンバイン高校で起きた二人の生徒による銃乱射事件。同じ事件を起点としたマイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』が“事件と社会の因果関係”を声高に主張したのに対し、本作は“生徒の日常”を淡々と描くだけ。平凡でつ…

小さな恋のメロディ

今40歳前後の人には説明の必要もない、日本中のローティーンが愛した初恋物語である。30年前の雑誌では、好きなスター投票の1位がトレイシー・ハイド、2位マーク・レスターというのが定番だった。TV放映のたびに宿題そっちのけで観て、小遣いを貯めてサン…

下妻物語

思春期男子の特性を“単純バカ”とするならば、思春期女子は“執念のバカ”である。たとえば好きなアイドルをけなされると、本気で泣く。基本デッサンがイビツなまま、驚異的に緻密なイラストを描く。まだ世間を知らないがゆえの、粘りの強い女子の執念。この『…

cELEBRATION / 槇原敬之

槇原敬之はよくはしゃぐ。そのナイーヴな歌詞やクマっぽい容貌に反し、子供のように笑ってはしゃぐ。今年7月、総勢169名のフル・オーケストラを従え、武道館で自作の19曲を歌ったのが本作。“軽快なポップスを重厚な音で聴かせる”という試み自体、槇原らしい…

ブラザーフッド

“韓流”とやらの甘さや美しさでこちらの受け入れ態勢が整ったところに、「これも忘れられては困りますよ」と本作が突きつけるのが、朝鮮戦争という史実。チャン・ドンゴンとウォンビンという甘い糖衣でくるんではいるものの、その中身は苦い。二人は、貧しく…

グッバイ・レーニン!

激動した東ドイツが舞台の、優しくて哀しいコメディ。熱心な社会主義者で愛国心の強い母親が、心臓発作で昏睡状態に陥ってしまう。奇しくもその直後にベルリンの壁は崩壊、東西ドイツは統一へ。母親は8ヶ月後にやっと意識を取り戻すのだが、強いショックは…

カレンダー・ガールズ

夫を失った仲間を励ますために、イギリスの片田舎の婦人会がヌード・カレンダーを企画。なんとモデルは自分たちだという。揶揄する周囲の声にオバサンたちの友情と結束はかえって高まり、できたカレンダーも大評判となって──。古来“裸になるべき”は“若い女性…

トーチソング・トリロジー

映画にしろ何にしろ、“同性愛”は取り扱いが便利な素材らしい。お笑いからお耽美、または差別、純愛、変態、裏社会……作者の都合でどうとでも料理できる。安易なアクセント、あるいは女性向けファンタジーとして同性愛を利用する作品も多い中、“本当のゲイを描…

N.Y.式ハッピー・セラピー

病んだアメリカを笑うコメディである。善良だが臆病、優柔不断なサラリーマンの主人公は、飛行機でたまたま隣り合わせた怪しげなオッサンのせいで「乗務員に暴行した」と訴えられる。誤解が誤解を呼んで、裁判所ではまさかの有罪判決。罰金の他に「怒りを抑…

着信アリ

家中の窓がガタガタと鳴る台風の夜、一人でこれを観たのは不運だった。怖い。ある大学で、携帯電話に関わる奇妙な事件が連続して起こる。“着信アリ”という表示に気づいて着歴を見ると、発信元は自分の番号、留守電には自分の声。着信時刻は数日後になってい…

クリビアにおまかせ!

まずは楽しめばいい。オランダで60年代に大人気となった連続テレビドラマの、30年を経ての映画化である。『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』を思わせる色彩豊かな映像、キッチュでポップな音楽、ノスタルジックな既視感を与えるダンス。…

ロバート・イーズ / ROBERT EADS

かつてアメリカで、同性愛者たちがよく使っていた標語がある。"We're Queer, Get Used to It!"──「ぼくらはオカマ、認めろとか分かり合おうとかは言わない、ただ慣れてくれ!」。 その同性愛者たちは、少なくともアメリカではすでに一般的な存在となったが(…

グローイング・アップ

男には、自分の思春期のうずきのようなものと一緒になって記憶されている映画があるはずだ。60年代後半〜70年代前半生まれの人にはこの「グローイング・アップ」、それより若い人には「ポーキーズ」あたりがそうか。内容はシンプル過ぎるほどにシンプルで、…

5songsondvd / カヒミ・カリィ

最新作『Montage』も好調のカヒミ・カリィ、初のDVD。トラットリア〜ユニバーサル時代(95年〜2000年)より5曲のビデオ・クリップ、TVスポット、クリップのメイキング映像を収録。“素(もと)”が美しい人なので、何をやっても様になる。登場するだけで洒…