Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-15から1日間の記事一覧

レッスン!

N.Y.スラム街の高校で、荒れすさむ悪ガキどもに社交ダンスを教える。最初は拒絶していた生徒たちも、情熱的なタンゴの実演を目の当たりにして興味を持ち始め(このタンゴは確かにド迫力)、お得意のHIP HOPと社交ダンスを融合させるなど、成長を重ねて自信を…

ヴィム・ヴェンダース DVD-BOX 旅路の果てまで

“ロケハンは重んじるがシナリオは用意しない、即興の旅物語”でニュー・ジャーマン・シネマの開拓者となった名匠ヴェンダースの3つ目のDVD BOXがバップから発売に。名作とされつつ廃盤で歯抜け状態になっていた“ロード・ムービー3部作”が、これで再び入手可…

図鑑に載ってない虫

人を仮死状態にさせる謎のクスリ“死にモドキ”を入手し、死後の世界をレポートせよ──女編集長からの命令を受けた“俺”が、不可思議な人間たちを雪だるま式に巻き込んで右往左往する。と、一応のストーリーはあるが、あまり意味はない。三木監督お得意の不条理…

ヘンダーソン夫人の贈り物

日本でも戦後の一時期流行した“額縁ショー”。舞台上の大きな額縁の中で、裸の女性が身動きせずにポーズを取り続ける。“これは絵画と同じ芸術である”という建前で規制をすり抜けた、ストリップの原型だ。この方法を第二次大戦直前の英国で発案したのは、なん…

ニキフォル 知られざる天才画家の肖像

ポーランドの保養地に居つき、物乞い同然の身なりで観光客に絵を売っていた画家ニキフォルの晩年を、静かなリアリティを持って描いた佳作。生涯で4万点にも上るという彼の作品はその純朴さから現在は世界的な評価を得ているが、言語障害があり意固地で我が…

悲しみなんて何の役にも立たないと思っていた。/ 槇原敬之

前作『LIFE IN DOWNTOWN』で自身の故郷や幼少期の泥臭さを振り返った槇原、1年9ヶ月ぶりの本作では“音楽に対する自分の姿勢”を原点回帰で確認しているようだ。不安げな独唱から力強い合唱に展開していく⑩やシンセとボイス・エフェクタで遊びまくっている⑦…

渋谷区円山町

前半では“彼氏とキス以上に進めずにいる女子高生”と“少しダサい25歳の臨時教師”、後半では“自分がイジメられていることに気づかないフリをしている少女”と“それに苛立つ孤高の少女”。本来なら交わらなかった二組の人間が、渋谷区円山町のラブホ街という“非日…

インビジブル・ウェーブ

香港でシェフとして働くキョウジは、いつものようにボスの妻と情事に耽ったあとで、彼女を殺した。それがボスの命令だったからだ。淡々としたまま、タイ行きの船に乗って香港を出るキョウジ。観客には彼の心情は見て取れないが、迷路のような客船の中で出会…

やじきた道中てれすこ

本気で惚れたのはおまえさんだけ──と旦那衆を騙しまくり、バレたらバレたで「ああ騙したよ、女郎は騙しますって看板上げて商売してんだい!」と言い放つ花魁のお喜乃(小泉今日子)。お喜乃に想いを寄せ、いいように使われている粗忽者の弥次さん(中村勘三…

長州ファイブ

黒船来航から10年後の1863年、まだ若い5人の長州藩士が特命を受け、命がけで英国に密航。そこで近代文明を目にした5人は“藩のため”から“日本のため”へと視野を広げ、それぞれが造船や鉄道、外交などを学ぶ。彼らこそが、のちの首相伊藤博文であり、近代日…

タルチュフ

16世紀にルイ14世のために上演されたモリエールの芝居を“劇中劇”ならぬ“映画内映画”として取り込んだ、1925年の無声映画。裕福な老人の遺産を手中にしようという家政婦の悪だくみを、流しの映画興行者に扮装した孫が暴く──という物語は今となっては起伏に欠…

オール・ザ・キングスメン

誠実な小役人が民衆の支持を受けて州知事となるが、権力を持ったとたんに腐敗が始まり──1946年のピューリッツァー賞小説『すべて王の臣』の二度目の映画化で、1949年の同名映画はアカデミー三部門受賞。これだけの古典的名作をリメイクするだけあって実力派…

300

古代ギリシアの軍事国家、スパルタ。服従を求めるペルシアの巨大軍を迎え撃ち、三日間の死闘を繰り広げたのは、わずか300人の精鋭戦士だった──歴史家ヘロドトスが書き残した“テルモピュライの戦い”を『シン・シティ』のフランク・ミラーがアメコミ化し、本作…

華麗なる恋の舞台で

女の業を描くのに、女優ほどおあつらえむきの職業はない。サマセット・モームの長編小説『劇場』の古典的な世界を下敷きに、40代半ばとなってさらに貫禄をつけた演技派アネット・ベニングが“大女優”を演じる。本作でゴールデングローブ賞主演女優賞に輝いた…

バブルへGO!!

ホイチョイ原作と聞いただけで“バブルの残骸”などと失笑する向きもあろうが、それは正直もったいない。商業ベースの浅い視点で世相の表面だけを追うのも、20年も続けていればひとつの才芸。というか本作、コメディとして十分おもしろい。広末扮する借金まみ…

それでもボクはやってない

電車で痴漢に間違われた青年が、“自分はやってない”という単純な事実を認めてもらうために過ごした日々──小説ではなく、新書の読後感に似ている。物語性を中心に据えず、一つの社会事象を丹念に追い描く。結果、かえって登場人物の心の細波が伝わってきたり…

幸せのちから

幼い息子と二人、ホームレス同然の生活から這い上がって一流の証券マンとなった男の物語。とはいえ派手なアメリカン・ドリームの物語でなく、筋運びは地味だ。それが退屈でないのは、二つの“現実味”のおかげ。一つはこの物語が80年代にサンフランシスコに生…

ナイトミュージアム

“オモチャ箱をひっくり返したような”という表現があるが、それを大の大人が集まって具現化してしまった。舞台はタイトルどおり夜の博物館。仕事もうまくいかずに離婚され、息子にさえ愛想をつかされそうなダメ男が、夜警の仕事にもぐりこむ。が、そこは夜に…

酒井家のしあわせ

関西の片田舎で暮らす再婚夫婦と二人の子ども。地味だが温かく、居心地の良い家庭……だったはずなのに、ある日夫が「後輩の男を好きになった」という突飛な理由で家から逃げ出してしまう。芸人や歌手など、生え抜きの俳優でない者が意外な名脇役として光るこ…

ラッキーナンバー7

不運な若者、スレヴン。仕事と恋人とアパートを一度に失い、旧友を頼ってNYに出てきた。が、不運はそこで急拡大、路上強盗にあった上、人違いで二つの敵対するギャングから目を付けられ、膨大な借金と殺人を押しつけられる。新人脚本家が10年かけて書いた物…

アンノウン

人里離れた広い破棄工場の中で、5人の男が目を覚ます。男たちはみな、記憶を失っていた。一人は銃で撃たれ、一人は縛られている。別室からは死体まで見つかる。何が起こったのかも、自分が何者なのかも思い出せずに錯乱する中、自分たちがある誘拐殺人事件…

Pet Shop Boys : Cubism in Concert

アルバム『ファンダメンタル』の発表後に行われた北米ツアーの最終日、2006年11月24日のメキシコでの公演を収録。ポップで茶目っ気ある曲調にHIVや軍国主義についての政治的メッセージを織り込む姿勢はデビュー当時から不変。自分はフォーマルな黒服で歌に専…

ダニエラという女

心臓に持病を抱える気弱な男が、宝くじで大金を手にし、ある美しい娼婦に「このお金がなくなるまで、一緒に暮らしてほしい」と申し出る──というストーリーはあってないようなもの。“イタリアの宝石”とも呼ばれる女優モニカ・ベルッチを鑑賞するためだけにあ…

007カジノ・ロワイヤル

6代目ボンド役にダニエル・クレイグを迎え、舞台を現代に移して(新ボンドは68年生まれの設定)仕切り直しとしたシリーズ第21作目。これまでにあった荒唐無稽な状況設定や秘密兵器のたぐいを排し、より現実的な“生身のジェームズ・ボンド”の新人時代を描く…

リトル・ミス・サンシャイン

アリゾナに住むフーヴァー家の人々は、揃いも揃って地味にダメ人間。7歳になる娘のオリーヴは、美少女コンテストでの優勝を夢見ているおデブなメガネッ子。父親は“人生の勝ち組になるためのハウツー”を開発して売り込もうと右往左往、結局自分が負け組にな…

スネーク・フライト

大物ギャングによるリンチ殺人を偶然見かけてしまった青年が、裁判の証言台に立つことに。それを阻止したいギャングは、彼を移送する飛行機にとある細工をした──なんて筋書きはどうでもいい。物語の主役はあくまでヘビ、ヘビ、ヘビ!! 「数千匹の毒ヘビが、…

太陽

近代の指導者たちを芸術映画として描いてきたロシア人監督が、ヒトラー、レーニンの次に主題としたのが昭和天皇だった。本作は昭和20年8月、敗戦を受け入れ人間宣言を行う前後数日間の天皇の姿を描く。暗く湿った色調の中、重い史実に虚構を織り交ぜつつ、“…

レイジング・ブレット

日本では劇場未公開の小ぶりな作品だが、掘り出し物だ。『24』のキーファー・サザーランドが憎らしげな連続強人魔として登場、ファンは驚くかも。物語は6歳になる妹のために17歳の姉が誕生パーティの準備をしているという、小さな幸せの場面から始まる。が…

トゥモロー・ワールド

西暦2027年、人類は静かに終焉へと向かっていた。突如すべての人間が生殖機能を失い、全世界で一人も子供が生まれなくなってから、すでに18年が過ぎていた。原因は不明。未来を見失った人類は無気力に陥り、文明は発達をやめ、世界各地は自暴自棄な暴力と無…

王の男

韓国史上最大の暴君として知られるヨンサングン(1476〜1506)。朝鮮王朝の正統な継承者として生まれながら、幼少時から粗暴で偏屈な性格を恐れられ、享楽的でかつ残虐な政治を行ったとされる。由緒ある寺院を妓生(宮仕えの芸者)の養成所に変え、夜毎の饗…