Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-19から1日間の記事一覧

ラースと、その彼女

女性が苦手なおとなしい青年が初めて連れてきた“彼女”が、ダッチ・ワイフだった!──と書けば、下品なセックス・コメディか、とんがった実験映画のように聞こえるかもしれない。が、本作、あくまで“癒し”をテーマにした丁寧で穏やかな作品である。 信仰心も厚…

アフタースクール

長編デビュー作『運命じゃない人』で視点や時間軸をズラしながら複雑なプロットを組み上げた内田けんじ監督、この二作目でも“観客を騙すこと”にあらゆるテクを使ってきた。“映画のお約束”や“観客の思い込み”を巧みに利用し、気持ちよくドンデン返しを重ねる…

ピクサー・ショート・フィルム & ピクサー・ストーリー

現在はディズニーの傘下にあるが本家を完全に食ってしまった感のあるアニメ・スタジオ、ピクサー。そのピクサーがCGの黎明期につくった実験的な試作や、セルDVDのオマケ用につくった映像など、13の短編作品を集めたのが本作。短いだけに単純に笑える秀作が多…

美しすぎる母

72年に米国の富豪一家で起きた、息子による母殺し事件の映画化だ──と、最初からネタを割っておく。そこを知らずに観たら、背徳的で散漫な描写につられ、着地点を見失う。上流階級に生まれ、大金持ちだが中身のない父親。若い母親は美しく気高いが、労働者階…

シューテム・アップ

銃は男性性の象徴、発砲は射精の象徴だと言われる。とすれば、全編を通して2万5千発の銃弾を縦横無尽に撃ちまくる本作は、“無限に射精を続けたい”という男の無理な欲望を映像化した作品と言えるかもしれない。 物語の始まりは、ニューヨークのさびれた裏路…

マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋

243歳になるマゴリアム氏のおもちゃ屋は、魔法のおもちゃで溢れかえり、子どもたちにも大人気。でも彼はもう引退して、店を23歳のモリーに譲ろうと決意した。そのとたんに、店のおもちゃたちが反乱を始める! モリーは元天才少女ピアニスト、今は自信を失っ…

“反韓流”を宣伝文句に掲げるだけあって、韓流スターも出てこないし、大味なお涙頂戴もない、奇妙な味のコメディである(当人らには悲劇なのだろうが、それぞれのダメさが我がことのように笑えてくるから、これはやっぱり喜劇だ)。田舎のハンコ屋のくたびれ…

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

“売れたから続編も”的な思惑ではなく、制作者・出演者側が“続編を作りたい!”という欲求に突き動かされたのだと思う。いや、19年前の前作『最後の聖戦』で故リバー・フェニックスがその若き日を演じて以来、ぼくらも知りたかったのだ、学者のくせに女たらし…

戦場カメラマンの唄

CD

戦場カメラマンとして各国の紛争地帯を回りつつ酒浸りの日々を送り、マンガ家の西原理恵子の家に転がり込んでからは“文章の書けない文筆家”として活動していた鴨志田穣。2007年3月腎臓癌により42歳で逝去。彼が病床で綴った詩をもとにつくられたのが本CDで、…

バンテージ・ポイント

国際テロ対策の首脳会議の演説会場、大観衆が見守る中で、アメリカ大統領が狙撃される。さらにテロと思われる大爆発も発生、会場は一気に戦場のように。その23分間の事件が、現場にいたテレビ・クルーや地元の警官、大統領本人やその警護官など、8人の視点…

つぐない

残酷な物語である。 1930年代の英国。庭園に囲まれた大きな屋敷で家族とともにくらす姉妹がいた。美しく気高く成長した姉・セシーリアは、自分の胸の中に小さな恋心が芽生え始めていることに気づく。相手は庭師の息子で、幼なじみのロビー。だが身分違いの恋…

兵動大樹のおしゃべり大好き。

近年“長尺のお笑いはテレビでなくDVDで楽しむもの”という流れができつつある。テレビでできないネタを舞台でやって、DVDで売る。十把一絡げのヒナ壇番組や瞬発力重視のネタ見せ番組ばかりがはやる中、テレビでちゃんとした“話芸”を楽しめるのは『人志松本の…

同窓会

思春期の自分を照れもなく懐古できるようになったのは、年を取ったからだろうか。30代も後半になった今なら、昔の自分の純粋さやアホさを微笑ましく思い出すことができる。……などと急に年のことを考えたのは、本作主演の宅間孝行と永作博美が、ともに70年生…

ジャンパー

冴えない高校生が突然“ジャンプ”(瞬間移動)の能力に目覚め、世界中を飛び回って遊ぶ悠々自適の生活をゲット。お金は銀行の金庫から拝借、リオで女を口説き、NBAの試合を観戦し、エジプトやローマの遺跡に忍び込んで観光。が、いつしか謎の組織が彼を追い、…

音符と昆布

実はこの世に“自覚のないアスペルガー症候群”の人、少なくないらしい。“知的障害がない自閉症”ともいわれ、傍目にはふつうの人。が、他人の言葉の裏を読めない。表情を読めない。社交辞令が分からない。なので自分も相手も苦労する。モノの並び方や色に執着…

ヒトラーの贋札

個人の贋札づくりはショボい資金稼ぎが目的だろうが、国家ぐるみの通貨偽造は“経済兵器”となりうる。相手国の通貨の信頼を失墜させ、国民経済を混乱させる。旧日本軍も中国通貨を偽造した。北朝鮮が米ドルを大量に偽造して云々、という噂は今も根強い。 そん…

LIVE! 清水ミチコのお楽しみ会“リップサービス”

_______________________________________________________ モノマネを軸にしたお笑いをこっそりと、届く人にだけ届くように地味に提供し続け、昨年デビュー20周年を迎えた清水ミチコ。テレビでの彼女の“無難な顔”しか知らない人は、もったいない。変幻自在…

犯さん哉

悪ふざけの極致、である。ともに演劇を愛しつつ、ナンセンスでシニカルな笑いを好む二人の中年男、ケラリーノ(作・演出)と古田新太(座長)が組み、2007年秋にパルコ劇場で演じた舞台を収録。紹介するほどのストーリーはない。すべてが不条理、無秩序なま…

俺たちフィギュアスケーター

繊細でアイドル的な存在のジミーと、野性的で荒れくれ者のチャズは、ともに米フィギュアスケート界のトップ選手。正反対の性格ながら金メダルを争う仲だったが、あるときリング上で洒落にならない大げんかをしてしまい、フィギュアの男子シングル部門から永…

シルク

19世紀のフランス。美しい妻をめとったばかりの若者エルヴェは、町の絹産業の発展のため、蚕の卵を求めて極東の地に旅立つことに。ユーラシアを横断し、苦難を乗り越えて行き着いたのは、日本の山奥の寒村。そこには英語を話す統率者(役所広司)がいた。だ…

ゾンビーノ

どうせB級映画だと油断してたら、思わず爆笑。真顔でバカをやってるのにハマる。舞台は古き良き50年代風のアメリカ、豊かで牧歌的な憧れの郊外生活に、ゾンビが共存しているのだ。突然の宇宙放射能で大量のゾンビが発生、悲惨な闘いを経て、今やペットや召使…

アーネスト式プロポーズ

英国の劇作家オスカー・ワイルドが絶頂期に書いた風刺喜劇『真面目が肝心』の映画化である。が、20年ほど前に流行した“同性愛耽美映画”にハマった女性たちには、別の意味で楽しめる一作だろう。『モーリス』と並ぶ名作、英国貴公子の退廃的な同性愛を描いた…

Mr.ブルックス ~完璧なる殺人鬼~

身近に何人か、重いアルコール中毒の友人がいる。彼らは一様に賢く、飲んでいないときはつねに葛藤し、酒を憎み、自分をも憎んでいるのに、一滴の酒を口にしたとたんに普段の人格は消え失せ、倒れるまで飲み続ける。金を使い果たしても、誰かを傷つけても、…

ヘアスプレー

変態監督として名高いジョン・ウォーターズが88年に撮った同名の原作映画には彼らしい毒味や下品さがあったが、2002年にブロードウェイでミュージカル化された際にポップでキュートな物語に転化して大ヒット、本作はその再映画化だ。舞台は60年代の米国下町…

前作から5年後、ウイルス繁殖を阻止できず全世界で人間がゾンビ化、しかも都市機能を失った街は砂漠に……。生き残った人間は主人公アリスの血液からウイルスの治療薬をつくろうとするが──。ゾンビと人間との闘いを描いた人気ゲームの映画化3作目。1作目は…

ディスタービア

主人公が部屋から出られないという状況で、たまたま隣人たちの様子を覗き見するうちに、身近な殺人鬼の犯行に気づき──というストーリーはヒッチコックの名作『裏窓』と同じ。違うのは、主人公を高校生にして、全体をアメリカン・ハイスクールのカフェテリア…

ホステル2

東欧の保養地にある一軒の安宿……そこはじつは殺人愛好家たちの出先機関だった! 宿泊した若者たちは知らない間にオークションにかけられ、さまざまに趣向を凝らした拷問で殺されていく──まるで都市伝説のような不気味な物語を具現化して大ヒットした前作の設…

それでも生きる子供たちへ

戦場の少年兵士は、本当は学校に行ってみたい。親にスリを仕込まれたジプシーの少年は、理髪師になりたかった。ヤク中の親を持つ娘は、自分のHIV感染を知らされていない。スラム街の兄妹はゴミを漁りながら明るく暮らし、捨て子の少女は壊れたお人形を持って…

サッド ヴァケイション

都会とも田舎ともつかぬ北九州の街並みに紛れ、二つの“疑似家族”があった。一つは密入国の手引き屋・健次と、彼が引き取った妹分や孤児。一つは小さな運送屋で、行き場をなくした者らを受け入れている。健次が失踪していた母親を運送屋で偶然見たことで、静…

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

家族愛、個性、夢の追求、自分らしさ──世に溢れるそんな“薄っぺらな良識”を嗤い飛ばして皮肉った一作。最近流行の“本当の自分を探して、結局不治の病でお涙頂戴”なんて話に辟易している人には、きっと痛快。 物語は、東京に住む女優志望の姉・澄伽(佐藤江梨…