Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-20から1日間の記事一覧

その街のこども

すこし前まで、“震災”といえば無条件に“阪神大震災”を意味していた。その大震災から15年目にあたる2010年1月17日にNHKが放映したドラマが反響を呼び、劇場版として再公開。異例な経緯だが、確かにその価値はあった。震災後に神戸を去った勇治と美夏が、震災1…

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

アル中と癌──抗えない二つの病気を抱えた男が、死の前のたった数ヶ月間、別れた家族との時間を取り戻そうとする。戦場報道家として漫画家・西原理恵子と出会い、二人の子をなし、アル中の狂気ゆえに離婚された鴨志田穣の自伝的小説が原作。一片の奈良漬の酒…

人生万歳!

教養はあるが偏屈な老人のもとに、無知で無恥な若い娘が舞い込む──『マイ・フェア・レディ』やその元ネタの『ピグマリオン』など、繰り返し使われてきた設定である。だがそこは手練のウッディ・アレン、単なる“年寄りに都合のいい恋物語”にはしない。信仰や…

キック・アス

アメコミの基本はみんな同じ、“超能力とアクションと勧善懲悪”。『ギャラクシー・クエスト』や『Mr.インクレディブル』はそれを逆手にとったパロディで、前者ではSF映画の俳優陣が本当の宇宙戦争に巻き込まれ、後者では引退後のスーパー・ヒーローの悲哀が描…

シングルマン

グッチやイヴ・サンローランでファッション界に名を馳せた偉才トム・フォードが、初めて映画監督に挑む。業界の例に漏れずゲイである彼が描くのはやはりゲイの大学教授で、その生活は傍目には知的で優雅。しかし今、彼の中にあるのは虚空のみ。長年連れ添っ…

告白

「私の娘は、このクラスの生徒に殺されました」──ある中学校のホームルーム、女教師の淡々とした告白から、物語は始まる。犯人の男子生徒やその母親、堅物の女子など、さまざまな語り手による“告白”が積み重ねられてゆくが、それぞれの告白には嘘や誤解が含…

フィリップ、きみを愛してる!

IQ169の詐欺師(ジム・キャリー、適役!)が刑務所の中で運命の人と出会い、熱い恋をして、二人で幸せに暮らすために何度も脱獄を図る──。恋する二人が男同士だという点はとりあえず置いといて(あのユアン・マクレガーの堂に入ったゲイ演技は笑えるが)、本…

インセプション

主人公は“夢”を操作できる産業スパイ。チームを組んで相手の夢に潜り込み、機密を盗み出す。夢で見ている夢の、その中の夢にまで深く潜っていくと、次第に虚実の感覚が失われて現実に戻れなくなり──と、そんなSF的設定には既視感があるし、物語の要となる主…

トイ・ストーリー3

オモチャたちは実は生きていた──! 95年、99年と大ヒットしたシリーズの、11年ぶりの新作。少年アンディは17歳に成長、オモチャ遊びはもう卒業。ずっと一緒だったカウボーイ人形のウッディ、宇宙ヒーローのバズらは、寂しくて仕方がない。しかもアンディの大…

マザーウォーター

京都の静かな一角で、小林聡美はウイスキーだけを置く小さなバーを、小泉今日子は疎水沿いの喫茶店を、市川実日子は昔ながらの豆腐屋を、それぞれ女一人で営んでいる。もたいまさこはそれらをつなぐ、散歩好きな女性。みんな群れずに独立してありつつ、とき…

グリーン・ゾーン

2003年、米軍侵攻下のイラク。ミラー(マット・デイモン)率いる捜索班は大量破壊兵器を探して数々の危険地帯に飛び込むが、偽情報に翻弄されてばかり。結局のところ大量破壊兵器など存在しないのでは? では誰が何の目的で偽情報を流し、開戦へと向かわせた…

コララインとボタンの魔女

ヒューゴー賞受賞の児童ファンタジー小説を『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の監督が映像化。築150年の旧家に引っ越してきた少女は、秘密の扉の先に最高の世界を見つける。そこではママは優しく料理上手、パパは陽気で親切で──ただし皆、目がボタンの…

50歳の恋愛白書

年は重ねていても知的で美人、人気作家の妻として如才なく振る舞い、子どもが巣立った今は悠々自適の隠居生活──そんな50歳の女性の、隠された過去、ずっと燃えたぎっていた情念を描く。邦題はあまりに安易。これは薄っぺらな恋物語ではなく、複雑で曖昧な“大…

シャーロック・ホームズ

ガイ・リッチー監督による新しいホームズ映画は、推理よりもアクション重視。冷静沈着なはずのホームズ、暴れる暴れる! ワトソンとの関係の描き方も独特で、まるで恋人相手のように拗ねたり絡んだり。そのやり取りがユーモラスではあるが、従来作のファンは…

マイマイ新子と千年の魔法

芥川賞作家・高樹のぶ子の自伝的小説をアニメ化。興行的には失敗だったが、情景の美しさからネットの口コミで人気を博し、いくつかの単館では異例のロングラン上映に至った。舞台は昭和30年、麦畑が広がる山口県防府市。空想好きな主人公・新子と、都会から…

恋するベーカリー

女好きの夫の浮気で離婚し、10年も離れていた元夫婦が、息子の大学の卒業式で再会。思わず焼け木杭に火が付いて──。とにかく元気に言い寄ってくる元夫と、物寂しさからそれを拒めない元妻。両者とも子どもっぽくて憎めない(娘や息子のほうがよほどしっかり…

不安の中に手を突っ込んで / 槇原敬之

CD

“ラブ”から“ライフ”へ、ゆっくりと歌のテーマを移してきた槇原。以前はその乖離がぎこちなかったが、デビュー20周年目の本作では、両者すっかり馴染み合っている。“40歳のおっさんの恋がテーマ”という「In love again?」はおっさんなりに切なく、夏川りみへ…

イングロリアス・バスターズ

あるナチス大佐と彼を恨むユダヤ人女性、ナチ壊滅を狙う米特殊部隊の三者を描く。タランティーノのふたつのクセが噴出。ひとつは“細部への執拗なこだわり”。第二次大戦中のフランスを舞台とし、当時の街の重い空気を念入りに再現。欧州各国から手練の役者を…

母なる証明

ある少女の惨殺事件。貧しい母子家庭の息子が安易な捜査で逮捕され、母は無実を証明しようと必死でもがく──。韓流ブームの牽引役で兵役を経たウォンビンの5年ぶりの新作だが、彼のファン向けではない。純朴で頭の弱い息子役を好演するかわり、本来の精悍な魅…

カールじいさんの空飛ぶ家

“ピクサーにハズレなし”という神話は長編10作目でも健在だ。冒険に憧れる少年と少女が出逢い、結婚し、ともに老いる。愛妻の死後、老人は決意した。山盛りの風船で思い出の家を空に浮かべ、二人が夢見た伝説の滝へと旅立つのだ──。無声映画のように音楽と映…

今、蘇る国鉄〜音の旅〜

CD

鉄道マニアには読んで字のごとくの“乗り鉄”“模型鉄”だけでなく、写真専門の“撮り鉄”、音声音響専門の“音鉄”などがいるとは聞いていたが……。昭和45年に国鉄が個人旅行の拡大を狙って打ち出した“ディスカヴァー・ジャパン”キャンペーンの勢いを借り、コロムビ…

九月に降る風

真夜中に忍び込む学校のプール。授業を抜け出しての酒やタバコ。野球とバイクとセックスと、喧嘩と友情と恋愛と──。舞台は90年代後半の台湾だが、国や時代が変わっても、男子高校生の興味や悩みは変わらない。7人の悪ガキたちの青春を描く本作、女子向けの作…

女の子ものがたり

エロ本出身にして今は善人顔で毎日新聞に子育て漫画を連載する漫画家、西原理恵子。彼女には、二つの乖離した作風がある。一つが博打アリ脱税アリの無頼派としての作品群で、もう一つは、彼女が育った貧しい漁村をイメージさせる、弱い人間たちの叙情詩。本…

ディア・ドクター

『ゆれる』と同様、西川監督、人の心の中の本音と建前の混在や、その微妙な移り変わりを描くのがうまい。見渡す限りの山と田畑、住民の半分が老人という僻村が舞台。みなから信頼され親しまれる村唯一の医者、伊野。都会でくらす娘を気づかう老いた母親、か…

ナイトミュージアム2

誰もいない夜の博物館では、魔法の石版の力により、すべての展示物が命を持って動き出す──2006年の大ヒット作の続編。今回は舞台を巨大なスミソニアン博物館に移し、登場キャラも倍増。化石の恐竜や騎兵隊、古代エジプト王にモアイ像、はてはダース・ベイダ…

ドゥームズデイ

た 2008年、謎の死のウィルスがスコットランドで猛威をふるう。政府は救済を断念、該当地域を高い塀で囲い、武力で被災者を封じ込める。つまりは見殺しにしたのだ。しかし27年後、今度は首都ロンドンでウィルスが発生。ワクチンを探す特命を受けた特殊部隊が…

Noriyuki Makihara 20th Anniversary Best LOVE / LIFE

CD

デビュー20周年を記念した本人監修のベスト盤。 21歳でデビューした頃の“ラブ”と、40歳になった(2010年当時)今の“ライフ”、槇原が葛藤しながら大切にしているものが選曲からも伝わってくる。セルフライナーが槇原らしい素直さで、“「SPY」は残念ながら実話…

バッタもん / 清水ミチコ

CD

「音楽誌で清水ミチコ?」と思う人がいるとすれば、テレビでの“無難な”彼女しか見たことがないのだろう。彼女の芸に含まれる音楽的要素は、プロも一目置くところ。2009年2月には清水がモノマネの定番とするあの矢野顕子が、自らのライヴに清水を招き、ピアノ…

消されたヘッドライン

新進気鋭の若い議員のもとで働いていた女性アシスタントが、地下鉄の駅で事故死した。彼女は議員の愛人だった。その前夜、路地裏の暗がりで、一人のヤク中の男が殺された。彼は置き引き専門のチンピラだった。無関係に見える二つの事件に細い繋がりがあるこ…

スター・トレック

66年の放映開始以来、TVシリーズ5本、映画10作と拡大し続けてきた『スター・トレック』の世界をいったん仕切り直し、世界観やキャラ設定はそのままに、初見の人でも楽しめるよう再創造した。もちろん古いファンが楽しめる小ネタや定番キャラの顔出しもあちこ…