Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-22から1日間の記事一覧

フライト

大量の酒で泥酔した頭をコカインで覚醒させて操縦席に着く──それが日常化したあるパイロット(D・ワシントン)が、一躍脚光を浴びる。制御不能に陥った航空機を奇跡的な手腕で胴体着陸、多数の客の命を救ったのだ。だが事故調査委の検証で、彼が当日朝まで愛…

アメリカン・ホラー・ストーリー

あの『glee』の制作陣が一転、古く豪奢な屋敷を舞台に繰り返されるホラーに挑戦。メインは現代の精神科医の一家だが、歴代住人が巻き込まれる事件の挿話がことごとく陰惨で巧い(そして彼らは屋敷に縛られたゴーストと化す)。女の目にはただの老婆に、男の…

東京家族

子どもたちの顔を見ようと田舎から上京してきた老夫婦。ところが子らはすでに自分の生活を持ち、どこかよそよそしい。唯一親身になってくれたの が、赤の他人である次男の恋人だった——。映画史に残る小津安二郎の不朽の名作『東京物語』(53年)を、山田洋次…

LOOPER / ルーパー

B級になりがちなタイム・パラドックスものとしては珍しい傑作。時は2044年。未来の犯罪組織が時間移動技術を悪用し、始末したい相手を過去に送る。それを待ち構えて殺す処刑人、通称“ルーパー”として働くひとりの男(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)。だが…

悪の教典

生まれつき他者の心に共感する機能に欠け、殺人に快感を覚える“サイコ・キラー”。それが一見さわやかな、若く健全な教師としてある高校に赴任してきて——。貴志祐介の同名ベストセラーの映画化。三池崇史監督の多重に倒錯した美的嗜好が全開になった怪作。伊…

HOMELAND / ホームランド シーズン1

あの『24』の制作陣が再集結したTVシリーズがDVD-BOXに。8年間イラクの捕虜として監禁・拷問されていた米兵士が、CIAに救出される。母国は“帰還兵の英雄”に騒然、だが一人の女性捜査官だけが“彼は洗脳され、テロリスト側に寝返っているのでは”と疑い続ける。…

私という他人

司会者に突然ふられ、瞬時にモノマネで返して笑いを取る……TVでよく見る清水の姿だが、それは彼女の一面でしかない。TVよりCDで聴く彼女の芸は饒舌で、ライヴだとさらに過激で悪質。彼女の笑いのセンスは実は多少“くどい”し“しつこい”のだ、瞬間的なものでな…

鍵泥棒のメソッド

『運命じゃない人』『アフタースクール』で“大ドンデン返し”の大技を見せた内田けんじ監督・脚本の、期待の新作。しかし彼の特技は大ぶりの投げ技だけでなく、地味で目立たない小技も巧い。人物の心境や状況が、ちょっとしたきっかけでどんどんズレていき、…

最強のふたり

人が真顔で状況が深刻なほど、物語はかえってコミカルになる。事故で頸髄を損傷し、首から下が動かなくなった大富豪。その介護人の面接に、採用になるつもりもなく、ただ失業保険の点数稼ぎのためにやってきた黒人男。意外にも富豪は、その男を雇う。知性も…

黄金を抱いて翔べ

妻夫木・浅野・桐谷らを筆頭にせっかく花形男優陣を揃えたのに、これはちと地味すぎやしまいか(というかみんな小汚い)。大阪でしみったれた生活を送る6人の男が集まり、銀行の地下に眠る6トンの金塊を強奪しようとする。しかし雑魚は何をやろうと雑魚であ…

夢売るふたり

『ゆれる』『ディア・ドクター』に続く、西川美和監督の長編4作目。相変わらず人を見る目線が柔らかくも精緻。特に松たか子の“女性特有の目”の演技や、生理用品を使ったさりげない演出などは、女性監督ならでは。その松と阿部サダヲという手練れ役者二人が演…

トガニ

“閉鎖施設での少年・少女への性的虐待”というとプラピら名優が顔を揃えた『スリーパーズ』(96年)を思い出すが、これが大人になった後の復讐劇を描く創作なのに対し、本作は数年前の韓国での現実の事件を元にした物語。その施設には、親から見放された聾唖…

ヒドゥン・フェイス

女優二人の全裸シーンが話題だが、それは些事。郊外の豪邸で恋人と暮らす、才能ある指揮者の青年。だが突然その恋人が失踪する。男は自暴自棄になるが、もともと女に不自由しない性質で、すぐに新しい女を家に呼び込む。が、その直後からバスタブには不自然…

アベンジャーズ

アメコミ界牽引車の片輪、マーベル・コミックが、手持ちの1.5流スーパー・ヒーローを総動員(=束ね売り)。アイアンマン、超人ハルク、キャプテン・アメリカ……日本での知名度は今イチでも、本国ではみな半世紀は続くコミックの人気キャラ。が、神話系から怪…

夜のとばりの物語

仏アニメーション界の鬼才ミッシェル・オスロ監督が、テレビ用につくった短編アニメ5本に新作1本を加えて映画化。独立した6つのお伽噺は、すべて時代と場所は違えど、短い尺の中で愛を描いたもの。極めて鮮やかな色彩を背景としつつ、登場人物はすべて黒い…

リンカーン弁護士

高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりに使う一匹狼のクセ者弁護士、ハラー。金のためなら多少の不法行為も気にしない。が、類は友を呼び、彼に助けを求める依頼人もクセ者ばかり。ある日突然の依頼に応じた彼は、次第に自分が何らかの陰謀の中にいると…

デンジャラス・ラン

CIAの血気溢れる新人が、南アの隠れ家の管理人という閑職に就かされ、鬱憤を貯めていた。そこに現れたのが、かつてCIAの洗脳技術を構築した心理学の専門家で、10年前に組織を裏切り逃走した老スパイ。その身柄を確保し連行すべく命令された新人は、謎の敵に…

私が、生きる肌

女の情念を緻密に描くアルモドバル監督が、今回は男の執念を軸とし、ややトリッキーな耽美怪談に仕上げた。美しい女が密室に監禁されている。人肌を模した薄い全身タイツだけを身につけ、一見全裸のよう。態度は従順で、反抗もしない。監禁主はある医者で、…

サニー 永遠の仲間たち

42歳の主婦が、余命数ヶ月となった親友のために女子校時代の仲間をひとりずつ捜し出す。が、キラキラしていた昔とは違い、それぞれが別の25年間を歩んでいて──。いわゆる韓流ではない、清々しい青春劇(韓流の大袈裟さやワンパターンを笑う自虐ギャグも)。…

アメイジング・スパイダーマン

お馴染みのアメコミ・ヒーローが、サム・ライミ監督の降板を機にキャストも総取っ替えで話も仕切り直し。『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督による第1弾で目新しいのは、失踪した科学者の父親への想いが伏線に追加された部分か。スパイダーマンの身…

幸せのキセキ

『We Bought a Zoo』という原題を捨てて凡庸な邦題を掲げたのは失敗。私たちは買ったのだ、つまり母親の死で歯車が回らなくなった父子家族が、なんと動物園を。反抗期の息子、おしゃまな娘、優しいがやることが無鉄砲なパパ。もちろん動物の相手は未経験で、…

愛と誠

さて困った。40年前の大ヒット漫画の原作が梶原一騎、映画化したら好評で続々編まで出たのが70年代後半。で、今回の再映画化は監督が三池崇史、脚本が宅間孝行。このメンツからして必見の一作なのだ(逆にここでピンと来ない人は観る必要はない)。当時は王…

ブラック&ホワイト

仕事は荒いが極めて敏腕、CIAでも注目株の若手スパイ二人組。二人の間の絆は固く、互いに命を預ける覚悟すらある。ただ困ったのことに、一方は女に手の早いイケメンチャラ男で、他方は奥手で一途なバツイチ男。そんな両極端の相棒二人が、たまたま同じ女に惚…

ファミリー・ツリー

葬式という非日常の場では、思わぬ出来事がいくつも起こる。親族の確執の表面化や、隠されていた真実の漏出。さまざまな出逢いや再会。本作では実際の死の瞬間も、葬式の様子も描かれてはいない。言わば物語全体が“死者を葬る儀式”なのだ。仕事一筋だった夫…

わが母の記

文豪・井上靖が母の晩年をモデルに描いた三部作小説を、樹木希林、役所広司らの手練れが演じる。呆け始めた母、その母に捨てられた過去すらをも文筆の熱源に変える息子、二人に振り回されつつも我を通す娘や孫たち。唯一、末の孫娘(宮ヵあおい)だけが祖母…

アニマル・キングダム

麻薬の過剰摂取で母親が死に、少年はその横でクイズ番組を眺めている。救急隊が到着しても、彼は多くを語らない。やがて絶縁していた祖母の家に引き取られることになったが、同居する三人の温厚な叔父は、実は全員が凶悪犯罪者。祖母を頂点に、犯罪を絆とし…

ドラゴン・タトゥーの女

スウェーデンの大ヒット推理小説が、本国に続きアメリカでも映画化。監督はデヴィッド・フィンチャー。主人公は男性新聞記者だが、描かれるのは2人の虐げられた女。一人は40年前、神隠し的に突然消えた少女。落ちぶれた名門一族だけが暮らす猜疑心に満ちた…

J・エドガー

“J・エドガー”という名に覚えがなくとも、“フーバー長官”なら聞いたことがあろう。48年間にわたりFBIのトップに君臨し、歴代の大統領さえもが怖れた男。彼は政敵や犯罪者だけでなく、大統領やその夫人の個人的な醜聞をも調査して機密ファイルに記録、いざと…

宇宙人ポール

『E.T.』の大人版スラップ・スティック。SFオタクのおっさん二人が、コミケ帰りに事故に遭遇、出会ったのは昔のアメリカン・コミックそのまんまの宇宙人! 実はUFOが地球に墜落して以来数十年間、米国政府が極秘で幽閉、利用していたのだ。『E.T.』と違い主…

50/50

アダムはシャイで几帳面な27歳の青年。だが周囲には、奔放な彼女、女好きの親友、お節介な母親に認知症の父親と、彼の生活をかき乱すような人ばかり。しかし彼はそんな生活を楽しんでいた──突然のガン宣告を受けるまでは。5年後の生存率は50/50。米国では「…