Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

2018-09-23から1日間の記事一覧

物語る私たち

母ダイアンは、太陽のように無邪気で奔放な女優。79年、5人の子を残して早逝。当時11歳の末娘がサラ・ポーリーで、『死ぬまでにしたい10のこと』では女優、昨今は監督としても成功。本作は、サラが母の実像を知ろうと周囲を訪ね歩いた証言の集積。各々の記憶…

寄生獣

人間の脳に寄生して乗っ取り、他人を喰らう地球外生物(?)が、ある高校生の右手だけに共存することになり──。一見チープなグロCG映画だが、人間と異形物が不本意ながらタッグを組む“バディ物”にはときどき名作が生まれる(例:「ドラえもん」「うしおとと…

インターステラー

そう遠くない未来。地上には砂嵐が吹き荒れ、人には住みにくい環境に。“実は地球の終焉が近い”と知られれば、それこそパニックで人類は自滅する。学校では「アポロ月面着陸なんて大ウソ」「アインシュタインの相対性理論もウソ」と教え、宇宙への関心を逸ら…

ランナーランナー

オンライン・カジノで全財産をスッてしまった名門大学の学生がそのシステムの不正操作を見抜き、その証拠を持ってカジノ王のもとに乗り込む。が、その意気と才能を買われ、逆にペテン師側に仲間入り。そこにFBIが登場、学生を拉致して、組織撲滅のためスパイ…

もしも君に恋したら

小品ながらウェルメイドなラブ・ストーリー。失恋したばかりの元医学生(D・ラドクリフ)がバーで偶然知り合った女子は、超生真面目で彼氏持ち。長年付き合った彼氏と添い遂げるつもりでおり、主人公にはなびこうとしない。主人公も堅物で、口説くこともでき…

ゴーン・ガール

そこそこ親しくなった相手の横で、ふと「この人、虚言癖がある」と気づいたときの背中をつっと冷たい汗が走る感覚、経験があるだろうか。概して相手は、快活で魅力的な女性だ。頭の回転も速く、場の空気を読み、有名人の知己も多く、周囲には楽しいことが溢…

イコライザー

“デンゼル・ワシントン主演のアクション映画”という時点で中身の想像はつくだろうが、期待は裏切らない。昼間はホームセンターで真面目に働き、夜は本を読んで静かに過ごすその男は、実は元CIA局員。ある夜バーで若い娼婦と出会ったことから、ロシアン・マフ…

あなたとのキスまでの距離

かつてチェロ奏者を目指していた男が夢を諦めたのは、家族のため。高校の音楽教師という地味な仕事にも、妻と娘との平穏な生活にも、不服はない。だが英国からホームステイに来たひとりの少女により、男は自分の中の抑圧に気づく。少女は美しく、そしてピア…

MOZU Season2 〜幻の翼〜

TBS×WOWOW共同制作、警視庁内部を主な舞台とした重厚な犯罪ドラマの第二シリーズ(全5話)。先に第一弾(全10話)鑑賞が必須、なぜなら人間関係も物語も容赦なく緻密で、観る側におもねることなどしないから。画面上では、誰もが遠慮なく煙草を吸う。各所へ…

余命90分の男

役者の私生活と作品とは分けて考えるべきだろう。だが本品の場合、余韻は複雑だ。かつてはよき父、よき夫だった男が、長男の死を機に、怒りと不満に支配された生活を送るように。が、自分が重病で余命わずかだと知った瞬間、男は病院を飛び出し、ないがしろ…

ジゴロ・イン・ニューヨーク

スパイク・リーやコーエン兄弟作品の常連俳優、ジョン・タトゥーロが書いた“冴えないジゴロ”の脚本に、あのウディ・アレンが惚れ込んで、W主演に(アレンが他人の監督作に出るのは14年ぶりとか)。舞台はN.Y.の下町。金のないジイさんが、不器用で定職もない…

趣味の演芸/清水ミチコ

CD

キャッチ・コピーは“趣味をこじらせ10枚目”で、タイトルが『趣味の演芸』。「これは素人芸の延長で、悪気はないんですよー」と言い訳した上で、悪気ありまくりのモノマネの数々。世の中をナメている(笑)。もはや伝統芸のユーミソや矢野顕子らの安定感に甘…

マレフィセント

ディズニー映画の代名詞でもある童話『眠れる森の美女』('59)を、ディズニー自身が大胆に解釈し直した。本来悪役の魔女マレフィセントを主人公に。そして、彼女が姫君に眠りの呪いをかけるまでの前日譚を創作。いかにも悪役然とした黒い魔女に、観客はだん…

サード・パーソン

『クラッシュ』の脚本家ポール・ハギスによるお得意の群像劇。落ちぶれ、行き詰まった中年作家と、その若い愛人との関係を中心に、ニューヨーク、パリ、ローマの3組の男女を描く。人物が多い上に筋は別々に進んで交錯せず、じれったい。さらにあちこちに理…

ぼくたちの家族

『舟を編む』で国際的評価を得た石井裕也監督が“中流家庭の幻想”を描く。郊外の住宅地で息子二人を育て上げた主婦。歳は60前後か。しかしその安穏とした生活は、彼女の病を機に崩れ始める。脳腫瘍による痴呆──。だが物語はここで泣かせの美談方面に舵を切る…

ブルージャスミン

若くして米ピープル誌“今もっとも美しい50人”に選ばれた美貌を持ちつつ、40代半ばとなる現在は演技での名声を獲得したK・ブランシェット。一件地味な本作にて、遅すぎるアカデミー主演女優賞など各国多数の賞を受賞。演じるのは、痛々しいほど見栄にこだわ…

ウッジョブ!

『ウォーターボーイズ』など“恥ずかしい青春”を描くのが得意な矢口監督、今回の主題は、なんと“林業”(原作:三浦しをん)。受験に失敗したチャラい18歳が、チャラい気分で林業の専門学校に進む。だが現場は山奥。ヒルやマムシがそこら中にいて、単線の電車…

薔薇色のブー子

天下のAKBの元センターでバリバリのアイドルの主演映画がこれ!?と驚いた珍作(失礼)。指原莉乃演ずる女子大生は超ネガティブ思考で、家に引きこもるようになったが、母親の再婚相手にも馴染めず、居場所がない。これではいけないと一念発起、ネットで知り合…

X-MEN:フューチャー&パスト

『X-MEN』シリーズももう15年目、ニューカマーのためにも一度、整理しよう。2014年現在シリーズは7作目。基本となるのは最初の3部作で、アメコミは複数の作者が物語を描くのが普通なので話に齟齬が起きやすいのだが、この7本はひとつの世界観で統一されてい…

プリズナーズ

もし自分の娘や息子が誘拐され、殺されたとしたならば、法の裁きをただ待つなんてじれったいことはできない──ましてや容疑者が証拠不十分で釈放され、ぬくぬくと自由に生きているならば。筆者なら、自分があとで刑務所に入ってもいい、そいつを引きずり出し…

あなたを抱きしめる日まで

ある一瞬に、その人の人生全体が集約されてしまうことがある。本作の母親にとっては、息子から引き裂かれた瞬間がそれだった。50年以上前、敬虔なカソリックだった彼女は、ただ一度だけ、快楽のために、許されざる“セックス”をした。結果、修道院に入れられ…

偉大なる、しゅららぼん

琵琶湖を挟んで古来より反目し合う二つの家系。ともに“授かった能力”を持ち、相手を操ったり心を読んだりできる──いわば純和風超能力モノ、あるいは関西系大ボラ話(笑)。しかし意外と違和感もなく、この荒唐無稽な話に引き込まれていく。原作は人気作家の…

ビフォア・ミッドナイト

大きな賞にはほぼ無縁だが、人に薦めると必ず“よかった!”と言われる連作の三作目。95年の『ビフォア・サンライズ』では、列車で出会った米仏の若い男女が意気投合、夜明けまでの限られた時間、ウィーンの街中を自由に歩き回る。9年後の『ビフォア・サンセッ…

ダラス・バイヤーズクラブ

まだAIDSが“ホモの疫病”“死の病”だと思われていた80年代半ば、HIVに感染したある男の実話。賭博と酒、麻薬と女のために生きる典型的なテキサス男で、“ホモ野郎なんてクソ食らえ”、のはずなのに。病院に担ぎ込まれたものの、金と権威に固執し、患者をモルモッ…

鑑定士と顔のない依頼人

生身の女との付き合い方を知らず、女性の肖像画を蒐集し壁一面に飾っているその老人は、堅物だが敏腕の美術鑑定士。その彼に、見知らぬ女から「両親の大量の遺品の鑑定を」との依頼が来る。鑑定士は女性が住む荒んだ豪邸に出向くが、女性は何やかやと理由を…

アイム・ソー・エキサイテッド!

『ボルベール <帰郷>』(06)などですっかり“スペインの巨匠”となったアルモドバル監督だが、実は小品のブラック・ユーモアがお得意。本作はその原点回帰。スペイン発メキシコ行の航空機が、故障で着陸不能に。パニック回避のため、エコノミー客と女CAには…

もらとりあむタマ子

前田敦子にはもう“元AKBセンター”という冠詞は必要ないのかも。ちゃんと“女優”になっている(数年前、TVドラマのロボット役での無芸とは確実に違う)。田舎で小さなスポーツ店を営む父の元に、東京から娘が帰ってくる。父子家庭でせっかく大学まで出したのに…

ゼンタイ

ゼンタイ。全身タイツの略で、要は「○○戦隊××レンジャー」が着用する、全身一体のナイロン系の衣装。そのカラフルでボディ・ラインの露わな自己主張性に反して、顔と表情は覆われていて見えない。それを愛好する素人の秘密集会があり(この時点で驚愕!)そ…

プレーンズ

『カーズ』シリーズ、最新のレーシングカーやスクラップ同然のレッカー車を擬人化し、世界中の子どもたちを虜にして(特に男子、なんであんなに車が好きなの?)、ひるがえって今回は飛行機が主役。“空を自由に飛ぶ”って、どんな子どもも夢に見ることじゃん…

カーズ2

自動車を擬人化したスピード・レースの物語が好評につき続編になったのだが、子どもたちが目を皿のようにして夢中になる理由が分からない(2歳の甥っ子が、「マックィーン!」「メーター!」とキャラを見分け、狂喜乱舞する)。たぶんピクサーには児童心理学…