Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

恋は邪魔者

1962年──アメリカにもっとも愛された大統領、ケネディの時代である。この若い大統領は進歩と平等と豊かさを説き、アメリカ初の宇宙船を飛ばせて国を沸かせた。その妻ジャクリーンは美しく、国中の女性が憧れるファッション・リーダーとなる。翌年の大統領暗殺、そしてベトナム戦争の泥沼化をまだ知らない、夢と希望の年だった。
その1962年のアメリカを舞台にした本作は、当然のようにキッチュでカラフルなラブ・コメディーである。片田舎の司書だったバーバラ(レニー・ゼルウィガー)が、「本気の恋なんてくだらない、女も気軽なセックスを!」という本を書く。本は男女同権に向かう時代の波に乗ってバカ売れし、女たちの反乱は勢いを増すばかり。男子代表のキャッチャー(ユアン・マクレガー)は売れっ子ジャーナリストで遊び人、当然バーバラのことを快く思わない。だから彼女をワナにかけ、「あのバーバラが恋に堕ちた!」という記事にしてやろうと、宇宙飛行士のフリ(笑)をして彼女に近づく……。
着せ替え人形のように次々と出てくるポップな衣装、ミッド・センチュリーの家具。コミカルな画面分割手法、いかにも書き割りの明るい背景画。画面の中で飛び跳ねているような小道具たちを眺めているだけでも楽しいし、当時の映画作法を逐一再現しようとしているのも凝っている。映画通の人にとっては、ドリス・デイロック・ハドソンの出演で60年代に人気だったコメディ『求愛専科』との重なりも楽しめることだろう。いたるところでこの古いドラマへの引用がなされ、見比べて笑うことができる。しかしそんなことをしなくとも、真正面から観て十分に楽しいコメディである。3分半の長尺セリフで最後のドンデン返しをしたレニー・ゼルウィガーに拍手。

【CDジャーナル 2004年07月号掲載】