Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

クリビアにおまかせ!

 まずは楽しめばいい。オランダで60年代に大人気となった連続テレビドラマの、30年を経ての映画化である。『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』を思わせる色彩豊かな映像、キッチュでポップな音楽、ノスタルジックな既視感を与えるダンス。加えてオランダの古い町並みや道行く人々のファッションも楽しい。当時のものを忠実に再現してあるのだそうだ。

 オランダの下町、サクラ通りでクリビアが経営する療養所「クリビアホーム」。そこに暮らすのは、気はいいもののちょっと風変わりな人たちばかり。かわいいけど少しマヌケな踊り子、元泥棒の青年、奇妙な発明家──。楽しい共同生活を唯一邪魔するのは、隣に住むケチでうるさい大家だけ。金持ち用の高級療養所を作って大儲けしようと企む彼は、何かとケチをつけてはクリビアを追い出そうとする。しかし町の人も療養所の住人も、みんなクリビアのことが大好きで……。

 楽しい。行ったこともないのに、オランダの古き良き時代を思い出したような気になる。

 そして十分楽しんだ後に、考えてみる。この、何かにゆるく包まれたかのような楽しい感覚の源は、どこにあるのかと。  思うに、「差異あるものとの共存」に一日の長があるのではないだろうか、このオランダという国は。登場人物は「ちょっと風変わりな人たち」と書いたが、よく考えれば“ちょっと”どころではないのだ。犯罪者であったという過去、同性愛、療養所で暮らすしかない無能な人たち──日本なら安いシリアスドラマに仕上げてしまいそうなネタを、皮肉るでもなく、もったいぶるでもなく、「みんなのすぐ横にあるもの」として描いている。いや、「描いている」という意識すらないのかもしれない、それがあまりにふつうのことで。この包容力があってこその余裕のコメディ。なるほどオランダ、きっといい国なのだろう。

【CDジャーナル 2004年1o月号掲載】