Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

トーチソング・トリロジー

 映画にしろ何にしろ、“同性愛”は取り扱いが便利な素材らしい。お笑いからお耽美、または差別、純愛、変態、裏社会……作者の都合でどうとでも料理できる。安易なアクセント、あるいは女性向けファンタジーとして同性愛を利用する作品も多い中、“本当のゲイを描いている映画”を知己のゲイたちに聞いてみた。『フィラデルフィア』『ハッシュ!』などと並んで最も多く名を聞いたのが、本作だった。

 主人公・アーノルドは、女装のクラブ・シンガー。無骨な体を豪奢なドレスに押し込み、下品な歌を気高く歌い上げる。しかし舞台を降りたときの彼は下品でも豪奢でもなく、ただ受け入れられ、愛されることを望む慎ましい男。いくつかの恋をへて彼はある若者と出会い、恋に落ちる。二人は共に暮らし始め、養子を迎えて“家庭”を作ろうとするが──。ジャジーな音楽とゲイらしい軽快なやりとりで笑わせる中、垣間見せる切なさがいい。愛情や悲しみについて深くつきつめた経験があるからこそ、自分を笑い者にすることができるのだろう。

 主演のハーヴェイ・ファイアスティンの自伝的コメディ三部作(トニー賞戯曲賞、男優賞)を原作に、一つの物語にまとめたものである。ファイアスティンは現在ブロードウエイで人気の舞台劇『ヘアスプレー』で主人公の母親役(!)を演じているというから笑える。アカデミー賞女優アン・バンクロフトが、息子を理解しようとすればするほど口汚くののしってしまう母親を熱演、二人の喧嘩のシーンは見物。また、ファイアスティンによる特典のコメンタリーは映画の解説であると同時に、78年の初舞台からすると四半世紀にも渡るアメリカのゲイの歴史の凝縮である。彼一流の毒と笑いの中で、映画では描かなかったAIDSの出現などが語られ、楽しくて重い。

【CDジャーナル 2004年11月号掲載】