Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

CM食べ放題の夜 世界のCMフェスティバル / コカ・コーラCMソング集 1962-89

 古いビデオテープを整理がてら観ていると、録画した番組より、合間に流れるCMに目を奪われる。「うわ、カマボコみたいな携帯電話!」とか「女の子が全員ニューハーフに見える……」とか。安心・安全をうたう銀行や証券会社のCMに、「この後すぐ潰れるんだよなあ」なんてしんみりしてみたり、記憶の底に埋もれていたCMソングで、学生時代の不器用な恋を思い出したり。

 また、海外の旅先でふと目にするCMに、なぜか安堵を感じることがある。異文化に囲まれ多少なりとも不安な中、どこの国でも人間の生活は似たようなものだなあと、感じさせるものがあるのだろう。どの国のCMであれ、若者の突飛な行動は笑い飛ばされるし、古女房に虐げられる中年男はトホホな顔で描かれる。少しだけエロティックな期待をさせておいて後でギャグに落とし込むなんてのも、万国共通の笑いの手法のようだ。

 CMを通じて自国の過去と現在を見比べるとその“差異”が際だち、自国と他国を見比べると、意外にも“共通点”が浮かび上がる。CMの多くは「視聴者の生活にいつの間にか馴染んでしまおう」と目論んでいるのだろう、ドラマやニュースなどよりよほどその時・その場所の“ふつうの生活”を封じ込めているのだ。“物を売るためだけの宣伝”では見向きもしない目の肥えた消費者のために、それぞれの時代、それぞれの国でCMはつくられ続けている。

 そんな世界各国のCMを、30年以上に渡って収集してきた人がいる。ジャン・マリー・ブルシコというフランス人で、集めたCMの数は50万本にも及ぶという。81年、彼はパリでそのコレクションを上映するオールナイト・イベントを開催、99年からは日本でも『世界のCMフェスティバル』として開催されるようになった。左は、その上映作品に日本語字幕を付けてDVD化したもの。

 右の『コカ・コーラCMソング集 1962-89』は、その名のとおりの歴史的集大成。加山雄三フォーリーブスピンキーとキラーズ矢沢永吉早見優佐藤竹善と、各時代のトップ・アーティストたちを起用し続けているのはさすがコカ・コーラ社。

 時代という縦軸と、地域という横軸に沿って、縦横無尽に存在するCMを眺める。そこに見えてくるのは、人間の生活の“差異”と“共通点”。それからもう一度、自分自身の生活を見直してみるのも、たまにはおもしろいだろう。

【CDジャーナル 2005年04月号掲載】