Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

コニー&カーラ

 59年の名作『お熱いのがお好き』では、殺人現場を目撃してしまった主人公の男2人が、殺し屋たちの目をくらますために女装して逃げた。“いかつい女装”の滑稽さだけでも笑える、当時の大ヒット・コメディである。しかしそれから半世紀、世の中は複雑化し、同じコメディでもさらに込み入ったプロットが必要になったらしい。本作のヒロイン、コニーとカーラは、同じく殺人現場を目撃した結果、“ドラッグ・クイーン”に扮して逃げるのだ。つまり“女のフリをした男のフリをする女”──みなさん、ついて来てますか?  コニーとカーラは、子供の頃からショウ・ビジネスの世界で成功することを夢見てきた親友同士。だがお世辞にも美人とはいえない二人はその上センスも悪く、寒々しいカフェテリアでショウをするだけの大人になった。このパッとしない二人が、殺人事件を目撃し、ドラッグ・クイーンに化けて身を隠す。しかし、田舎者丸出しのズレたセンスが功を奏したのか、彼女たちは突如売れっ子となり──。

 とことん盛り上がったウイッグ、顔の原形を無視した塗り絵系メイク、安物の布地をゴージャスに引きずって歩くその姿──ドラッグ・クイーンは“女になりたくて”女の格好をしているのではない。彼らは、女性の中でも一番極端な“女らしさ”を取り出し、強調することで、世の中の常識や境界線というものを嗤っているのだ。しかしそういった“異端”としての彼らの姿は、数々の映画の題材となるうち、いつしか“定番”と化してしまった。そこで本作が、もう一度常識をひっくり返す作業をしてくれているわけである。唯一、歴代のドラッグ・クイーン映画に必ずあった笑いの奥の物哀しさが、本作では薄い。これが“世間に一般化する”ということなのだろう。

【CDジャーナル 2005年07月号掲載】