Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

PINK LADY LAST TOUR Unforgettable Final Ovation

 ふと「大人になってよかったなあ」と思った。2005年5月26日、東京国際フォーラムでのピンク・レディー復活ライブ最終日のことだ。子供のころ、少ないお小遣いをためて買えるのは、ピンク・レディーの筆箱がせいぜいだった。3ヶ月ごとに出るレコードなど気軽に買えるはずもなく、テレビの前にテレコを置いて、歌番組を“生録音”したものだ(「ええかげんお風呂入んなさい!」という母親の声も一緒に生録音)。あれから30年近く経ち、今やあの二人が、目の前で踊っているのだ。年を取ることで獲得した役得、そして開放感である。

 本DVDは、その復活ライブ最終日を丸ごと収めたもの(それ以前のライブもDISC-2に収録)。復活ライブ・ツアー自体は2003年に始まり、限定2年間で全国100カ所を回ったので、目にした人も多いはずだ(チケットはかなり取りにくかったようだが)。

 DVD発売日の8月25日は、ちょうどデビュー30周年の記念日である。社会現象とまで言われたあの“旋風”から、もう30年か……などと感傷にひたる必要はない。復活・再結成された懐かしのグループは数々あるが、ピンク・レディーはそれらと一線を画す。“懐かしさ”に甘えることなく、歌にしろ踊りにしろ、明らかに当時よりレベルが高いのである。現役時代よりも高いヒールを履き、ダンスはシャープでキレがある。腰より高く足を上げて踊る「UFO」など、やり過ぎ感が極まって笑ってしまうほどだ。

 アイドル時代にはあり得なかった、開けっぴろげなトークも見所のひとつ。「歌って踊っているときにはピンク・レディーになりますが、それ以外のときは、47歳のオバサンですからー!」「すごい汗……きっとこれ更年期よ」というケイのセリフが場を沸かせる。完成されたパフォーマンスとは対称的な打ち砕けたMC、その落差が楽しい。

 当日の会場はさまざまな年代の女性や、ゲイとおぼしき男性の群れが「渚のシンドバット」や「カメレオン・アーミー」のコスチュームを身にまとい、あれは相当練習したのか、昔の記憶が体に染み付いているのか、どの曲も完璧な振り付けで踊っていた。広い会場全体が“非日常”の盛り上がりを見せていた。“大人たち”が気を許して楽しんでいる、ありそうでなかなかない空間。

 後にミーは「現役の頃は“ピンク・レディー”というプロジェクトのパフォーマンス担当でしかなかった」という意味のことを言っている。名うての作詞家・作曲家・振り付け師がチームを組み、ピンク・レディーを演出した。だが、それから30年近くたった今回は、ミーとケイ自身が演出・振り付けにまで取り組んでいる。そこにはかつてあった“やらされている感”はみじんもない。

 この二人も観客も、ダテに二十数年を生きて来たわけじゃない。「年を取ってよかった」と思っているのは観客ではなく、案外、舞台の上にいた彼女たちの方なのかもしれない。

【CDジャーナル 2005年09月号掲載】