Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ハウルの動く城

「この世界をずっと見ていたいなあ」と思う──ストーリーの起承転結をどうこういうよりも、ただこの賑やかで小気味よい世界にしばらく住んで、まわりを眺めていたい。父の残した下町の帽子屋を切り盛りする18才の少女、ソフィーは、ある日美しい青年と出会う。青年は何者かに追われている様子で、気がつけばソフィーは大空へ舞い上がり、一緒に空中を走っていた! が、これを妬んだ「荒地の魔女」が、ソフィーを90才のお婆さんに変えてしまい──。“敵”と“味方”、“正義”と“悪”の対立がどんどん曖昧になっていくのがいい。ついでに“美”と“醜”、“若”と“老”の境目も崩されていく。いつも頼っていた価値観がどうでもいいことに思えた後、空から見る町並みのすばらしさや、悪魔や子どもらとの小賢しくて温かいやりとりが素直に胸に来る。全映像とリンクした特典の絵コンテも魅力的。この世界がいかに手塩にかけて作られたことか。

【CDジャーナル 2006年01月号掲載】