Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

やさしくキスをして

舞台はイギリスの下町。パキスタン移民2世のイスラム青年と、敬虔なカソリック高校の女教師が出会い、恋に落ちる。多文化が共存する社会だからこそ、個々の背負った文化が、その生活に深く根ざしているのだろう。二人にとってはただの恋でも、周囲にとっては“異教徒との恋”。しだいに互いの家族や同胞社会、職場が二人を引き裂こうと動き始めて──。
文化が違う人を受け入れるための覚悟を、決して重苦しくなく、静かに、時にコミカルに描いた。
今年70歳になろうというケン・ローチ監督、すでに得た名声を胸に安穏と生活していてもいいはずなのに、こんな社会の隅っこの矛盾を見つけては描き出してきやがる。珠玉、そして円熟という言葉が似合う小品。

【CDジャーナル 2006年03月号掲載】