Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

私の頭の中の消しゴム

体より先に精神が死んでしまう病──若年性アルツハイマーにかかった27歳の女性と、その恋人を誠実に描く。子どものように素直で茶目っ気のあるスジンと、無愛想で真っ直ぐなチョルス。二人は出会い、互いに惹かれ、やがてその気持ちは成就する。が、しだいに彼女の行動に異変が起こり──。愛する人の顔さえも忘れていく恐怖。忘れられる悲しさ。若く美しい二人だから泣ける映画になるが、現実でも何十万という老夫婦が今この瞬間にも同じ苦しみを経験していることに想いを馳せたい。そしてなお切なくなる。老夫婦なら何十年分もためてこられた思い出が、この二人には与えられないまま、わずかに残る楽しい思い出さえも、彼女の頭の中で消えていく。

【CDジャーナル 2006年05月号掲載】