Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

軍艦島 / ザ・ダム

 雄大大自然よりも、巨大な人工物を前にしたときのほうが心が躍る──そんな“元・少年”は少なくないらしい。朽ちた遺跡や廃墟、バカバカしいほどの巨大建築を見て、彼らはキラキラと目を輝かせる。たぶん、子どもの頃に“秘密基地”に熱中したタイプの人たちだ。

 有名な「軍艦島」など、彼らにとっては聖地のようなものだろう。長崎沖にあり、かつて石炭採取で栄えたこの小島は、周囲をコンクリートでうち堅め、中には日本初の高層鉄筋アパート群が林立する。この“軍艦の形をした近未来都市”は74年の炭坑閉鎖により一夜にして無人島となり、以来30余年、今では島全体が立ち入り禁止の廃墟だ。なるほど、確かに興味深い。大正時代に建てられた“最新の”高層アパート。その上にある空中庭園。学校も商店街も、映画館もパチンコ屋も全部この島の中に設置されていた──それがそのままの姿で朽ちている。廃墟好きにはたまらないだろう。DVDで観るその姿は、神秘的ですらある。

 一方で、失礼ながらマニア以外には「よく商品として発売されたな」と思わせるようなDVDもある。『ザ・ダム』は、ダムを偏愛し、ネット上でダムのデータベースを公開していた一人の男性と、それに惹かれた一人のプロデューサーが制作した、世界初の“ダムめぐり”DVD。早朝から車に乗って山間の道を進み、ロードムービー風にダムをはしごする。山陰から突如現れる巨大なコンクリート壁に喜びの声を上げ、ホームビデオを回しながら「アーチ式ダムの曲線美」やら「重力式ダムの圧倒的な迫力」を淡々と語り合う。その緻密な知識はまさに“ダムのムダ知識”。感心しつつも、“大人げない”という言葉が頭に浮かぶ。

 廃墟や巨大建築のなにが彼らを引きつけるのか──思うに、“誰がどうやってこんな無茶なものを作ろうとしたのか”という呆れと、その裏にある“実は自分も参加したかった”という羨望。さらに、何十年間、何百年前にそこで暮らしていた人間の“日々の名残”がその場所に封印されてるんだという感覚。そういったものが圧倒的な迫力で──って、御託はいいや、チクショー! オレも行ってみてえー!! 大人げなくて結構、軍艦島バンザイ、アーチ式ダム、バンザイ!

【CDジャーナル 2006年07月号掲載】