Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

シン・シティ

 バイオレンス・アメコミの世界を強引に、しかし忠実に実写化しただけで、かくも美しい映像ができてしまったか──。

 原作は、芸術性のある作風で名高いフランク・ミラーの三編のアメコミ。これに惚れ込んだ“映画オタク”のロドリゲス監督がミラーを口説き落として共同監督とし、さらに盟友タランティーノをゲスト監督に迎えて撮ったというだけあって、恐ろしく手の込んだ仕事をしている(オタク魂!)。コントラストの強いモノクロの中、ポイントを押さえて鮮やかな色を差し込んだ映像は、どの一瞬を切り取っても一枚のイラスト作品になるほどスタイリッシュ。内容の残虐さと相まって、“現代のフィルム・ノワール”と言っていいだろう。

 舞台となるのは、男と女の欲望が剥き出しとなる犯罪都市シン・シティ”。ある前科者は、醜い大男である自分にただ一人寄り添ってきた美しい女を、何者かに殺される。またある男は、娼婦街の揉め事に巻き込まれ、腐敗した警察に追われる身となる。心臓病を抱える老刑事は、連続殺人犯から一人の少女を救おうとしたため、仲間に撃たれて瀕死の傷を負う。三人の男がそれぞれ立ち向かうのは、街の闇の中にある巨大な権力。その回りには魅惑的な女たちが毅然と立ち並び、裏切りと復讐が重なって血しぶきが飛び、暗闇の中で誰かが死ぬ。

 観客を選ぶ作品ではある。勧善懲悪を好む観客には不向きだろう。アメコミ・ファンや、『キル・ビル』好きには絶好の一作となる。筆者はそのどちらでもないが、“モノの制作現場マニア”なので、プレミアム版特典の“全シーンのグリーンバック映像”は見物だった。スタイリッシュなイラストを思わせるのは当然、この映画、ほぼ全場面がグリーンの部屋の中で撮影されたCG映像なのだった。唖然。

【CDジャーナル 2006年08月号掲載】