Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

それでもボクはやってない

電車で痴漢に間違われた青年が、“自分はやってない”という単純な事実を認めてもらうために過ごした日々──小説ではなく、新書の読後感に似ている。物語性を中心に据えず、一つの社会事象を丹念に追い描く。結果、かえって登場人物の心の細波が伝わってきたりする。裁判とは、すべてをいったん“言葉”に変換して進行していくものらしい。その変換の際に生まれたズレが重なり、どんどん真実から遠ざかっていくさまは、恐怖ですらある。たとえば何かの映画を観て、記憶だけを元にそれを言葉ですべて説明し、それをさらに再映画化したら、元の映画とはかけ離れたものが出来上がるだろうに。法律用語が頻出するので、日本語字幕オンで観るのが分かりやすいかも。

【CDジャーナル 2007年10月号掲載】