Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

タルチュフ

16世紀にルイ14世のために上演されたモリエールの芝居を“劇中劇”ならぬ“映画内映画”として取り込んだ、1925年の無声映画。裕福な老人の遺産を手中にしようという家政婦の悪だくみを、流しの映画興行者に扮装した孫が暴く──という物語は今となっては起伏に欠けるものだが、筋がシンプルだからこそ、“偽善者”や“宗教かぶれ”は時代を越えて存在するものだという主題が直に伝わる。ドイツ無声映画の巨匠と称されるF・W・ムルナウ監督だが、作品の中には現存しないものも多い。本作はアメリカに輸出され保存されていたポジ・プリントを元に復元されたもので、41分の解説映像を含め、商業映画の黎明期をうかがい知る資料として価値が高い。

【CDジャーナル 2007年11月号掲載】