Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

インビジブル・ウェーブ

香港でシェフとして働くキョウジは、いつものようにボスの妻と情事に耽ったあとで、彼女を殺した。それがボスの命令だったからだ。淡々としたまま、タイ行きの船に乗って香港を出るキョウジ。観客には彼の心情は見て取れないが、迷路のような客船の中で出会うのは、どこか奇妙な人間ばかりで──。ロードムービーと評される本作だが、“旅による心の変化や成長”はなく、むしろ行き場をなくした感情が不安定にさまよう“堂々巡り”を、色調を抑えた映像と、不条理な出来事の組み合わせで描いている。放置されたままの小さな謎も多く、深読みすればどこまでも深く潜っていけそう。同主演・監督の前作『地球で最後のふたり』の不思議な空気感が好きな人に。

【CDジャーナル 2007年12月号掲載】