Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ヴィム・ヴェンダース DVD-BOX 旅路の果てまで

 “ロケハンは重んじるがシナリオは用意しない、即興の旅物語”でニュー・ジャーマン・シネマの開拓者となった名匠ヴェンダースの3つ目のDVD BOXがバップから発売に。名作とされつつ廃盤で歯抜け状態になっていた“ロード・ムービー3部作”が、これで再び入手可能になる(既販の2組のBOXは東北新社で、発売元は異なるが)。

 3部作の一作目『都会のアリス』('73)では、米国の紋切り型社会に失望した男が帰国途中に遭遇した少女と“帰る場所”を探して欧州を旅する。東西ドイツの国境沿いに続く道で撮影した『さすらい』('76)では、たまたま出会って大型ワゴンで旅する二人の中年男を描いた。2作とも、物語よりも精細なモノクロの風景描写が印象的だ(これに東北新社の『まわり道』('75)を合わせたのが3部作)。最近の作品からは、躍動感あるキューバ音楽の古老たちを追って大ヒットしたドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』('99)を。どう見ても貧しい生活なのに、原色の衣をまとって楽しく歌い暮らす人々の姿が美しい。他は80年代初頭の佳作で、『ことの次第』('82)は映画作りがうまくいかない監督自身のもどかしさをそのまま即興作品とし、『左利きの女』('82)では自立しようとして夫を拒絶するものの何もうまくいかない妻の姿を淡々と描く。

 どの作品にも共通するのは、人生や生活の“決着のつかない様”をそのままに切り取って見せているところ。自作を評して“行き先だけあってストーリーのないロード・ムービー”という監督の言葉は、彼の人生観そのものでもあるのだろう。特典に監督が作品背景を語るインタビュー映像と、初期の短編(児童施設を舞台とした74年のTVシリーズで彼が担当した2話、国内初DVD化)を収録。

【CDジャーナル 2008年02月号掲載】