Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

サッド ヴァケイション

都会とも田舎ともつかぬ北九州の街並みに紛れ、二つの“疑似家族”があった。一つは密入国の手引き屋・健次と、彼が引き取った妹分や孤児。一つは小さな運送屋で、行き場をなくした者らを受け入れている。健次が失踪していた母親を運送屋で偶然見たことで、静かだった二つの生活は捩れ始め──。デビュー作『Helpless』('96)、カンヌ批評家賞作品『EUREKA』('00)に続き、青山真治監督が故郷を舞台に描く“北九州サーガ”の第三作。前二作の主人公らが年を取って登場、その後日譚でもある。痛々しい人生を殺風景に表現する監督が、今回は“女”にも重点を置いた。逆境に対して男たちは“逃げる”か“復讐”しかできないのに、女たちは“それでも全部受け入れる”。その笑顔がしたたかで、薄ら怖い。ただ省略の多い筋運び、前作との関連の曖昧さ、くぐもった九州弁の聞き取り辛さなど、観客への不親切さがやや目に付く。通にはそれも味なんだろうが。

【CDジャーナル 2008年04月号掲載】