Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

美しすぎる母

72年に米国の富豪一家で起きた、息子による母殺し事件の映画化だ──と、最初からネタを割っておく。そこを知らずに観たら、背徳的で散漫な描写につられ、着地点を見失う。上流階級に生まれ、大金持ちだが中身のない父親。若い母親は美しく気高いが、労働者階級からのし上がり、歪んだプライドを持つ。そんな二人の間に生まれた息子は、大人になったとき、初めての彼女を父親に寝取られた。父に見捨てられた母親と息子は、ともにゲイの愛人をつくる。息子はその両方と寝る。もはや肉体関係は快楽ではなく、お互いの存在の確認作業のよう。あらゆる人間関係が崩れていく中、最後に残った母と子もまたその“確認作業”を──。映像は退廃的で美しいが、物語は救いようがない。

【CDジャーナル 2008年12月号掲載】