Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ディア・ドクター

『ゆれる』と同様、西川監督、人の心の中の本音と建前の混在や、その微妙な移り変わりを描くのがうまい。見渡す限りの山と田畑、住民の半分が老人という僻村が舞台。みなから信頼され親しまれる村唯一の医者、伊野。都会でくらす娘を気づかう老いた母親、かづ子。この二人、ともにある嘘をついていた。伊野は実はニセ医者で、かづ子は──。伊野が突然姿を消したことから物語は始まり、時間軸を前後しつつ、小さな村の大事件を丁寧に描く。僻地医療という難題をベースにしながらも、仕上がりは上品かつコミカルで、脇役陣も実に巧み。

【CDジャーナル 2010年03月号掲載】