Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

カールじいさんの空飛ぶ家

ピクサーにハズレなし”という神話は長編10作目でも健在だ。冒険に憧れる少年と少女が出逢い、結婚し、ともに老いる。愛妻の死後、老人は決意した。山盛りの風船で思い出の家を空に浮かべ、二人が夢見た伝説の滝へと旅立つのだ──。無声映画のように音楽と映像だけで夫婦の数十年を描いた冒頭の4分間が特に美しくて印象的。偏屈な老人と元気で未熟な少年、カラフルで躍動的な風船の家と武骨で幻想的な秘境の景色など、対比的な要素を全体に盛り込み、特殊メカで人語を話す犬たちがコミカルに脇を固める。切ないのに愉快で、お見事。

【CDジャーナル 2010年06月号掲載】