Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

マザーウォーター

 京都の静かな一角で、小林聡美ウイスキーだけを置く小さなバーを、小泉今日子は疎水沿いの喫茶店を、市川実日子は昔ながらの豆腐屋を、それぞれ女一人で営んでいる。もたいまさこはそれらをつなぐ、散歩好きな女性。みんな群れずに独立してありつつ、ときには一緒に食卓を囲んだりして、ゆるく心地よいつながりを保っている。穏やかに流れる時間、素朴で美味そうな手料理、古くて味のある家具や道具──2003年の日テレ系ドラマ『すいか』を源泉に、映画『かもめ食堂』(2006年)で様式が確立された“ひとりで生きる女性のスローライフ映画”シリーズ(監督も違うし、本当はシリーズじゃないけど)の最新作が『マザーウォーター』。『かもめ』では北欧の日本食堂、『めがね』(2007年)では南の島の宿屋、『プール』(2009年)ではタイのゲストハウスと、それぞれ舞台は変えつつも、すべて過去や経歴が分からない、でも自分の居場所はしっかりと築いている女性の物語だ。“独身女子の夢見る生活の具現化”的な傾向は作品ごとに色濃くなり、雰囲気重視で筋書きは二の次となるが、舞台となる町の選び方が秀逸で、まったりとした空気感はたまらなく居心地いい。

 が、最新作『マザー』には少しだけ水を差してみる。まず、京都が舞台なのに誰も京都弁を話さない。あくまで“そのままのキミでいいんだよ”ということなのだろうか。もうひとつ、結婚や恋愛を描かないのに、誰の子でもない(=誰の子でもある)赤ん坊を出すのは、“結婚も恋愛も面倒だけど子どもは持ちたい”という女性の願望を安易に叶えすぎか。まあそれがファンタジーというもの、言うだけ野暮なのだろうが。

 シリーズを通して料理を監修した飯島奈美の仕事には文句なしに感服。出てくる料理のすべて、食べるだけで幸せになりそう!  『マザー』公開を機に『かもめ』『めがね』『プール』がblu-ray化、一気見してほっこりするのもいいかもね。

【CDジャーナル 2010年11月号掲載】