Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

その街のこども

すこし前まで、“震災”といえば無条件に“阪神大震災”を意味していた。その大震災から15年目にあたる2010年1月17日にNHKが放映したドラマが反響を呼び、劇場版として再公開。異例な経緯だが、確かにその価値はあった。震災後に神戸を去った勇治と美夏が、震災15年目の前夜、新神戸駅で偶然出会う。若者らしく出合い頭のセックスを予見させるような軽快な会話が続く中、震災の記憶に話が及んだ途端、重苦しい空気が二人を覆う。彼らにはそれぞれ、処理できないまま封印していた痛い記憶があった。時に反目しつつ、あるいは恋人のようにじゃれつつ、夜明けまで神戸の街をさまよい歩く二人。物語は、ほぼセリフのみで進行する。ドキュメンタリー風のカメラ回しや、主演の二人の自然な関西弁が効果的に心を揺さぶる。奇しくも本作の脚本が芸術選奨新人賞を受賞したその日、3月11日、さらに壮絶な震災が東日本を襲った──現実はいつも人間の想像を凌駕する。

【CDジャーナル 2011年06月号掲載】