Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

愛する人

十代で望まぬ妊娠・出産を経験し、心を強ばらせたまま中年になった女。養子に出された娘は優秀な弁護士に成長したが、美しい彼女の内側も、どこか歪んでいる。一方で、妊娠を切望したものの適わず、養子を取ろうとしている若い黒人夫婦がいる。誰もが幸せになりたい、愛する人を幸せにしたいと願って行動しているのに、微妙に噛み合わない歯車。最後の最後に一瞬だけ、いくつかの歯車が軋みながら同期するが、それが幸なのか不幸なのかは誰にも分からない。“産む性”である女の辛苦は、男よりも数段深い。

【CDジャーナル 2011年09月号掲載】