Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ブラック・スワン

ブラック・スワン

清純な“白鳥”と、邪悪で官能的な“黒鳥”──相反する二役を一人が演じるバレエ『白鳥の湖』。

主人公ニナは技術は完璧だが、黒鳥を演じるには生真面目すぎる。感情を解き放てと迫られ、不器用に自分を追いつめた彼女は、いつしか狂気の波に足をすくわれ──。

高尚な芸術作品かと思えば、ある意味“下衆”なほど分かりやすいサイコ・スリラーだった(ポルノとして観てもOK)。

有名なわりに『レオン』『スター・ウォーズ』程度しか代表作のなかったN・ポートマンが、本作の鬼気迫る演技で数々の主演女優賞を獲得。

焦点はその“狂気”一点に絞られ、他の要素──過干渉な母親や、先輩・同僚との軋轢など──は、あくまで端的に、小道具やセリフで明示的に表現される。

幻覚を演出するCGも効果的で、特に“黒鳥の踊り”は美しすぎて下品なほど。バレエとは本来、下衆で下品な部分を持つものなのか。ドガの“踊り子”でも、少女を金で買うパトロンの姿が舞台袖に描かれてるし。

【CDジャーナル 2011年19月号掲載】