Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

タンタンの冒険:ユニコーン号の秘密

 “シャーロキアン”(→シャーロック・ホームズ)、“トレッキー”(→スタートレック)など、あまりにも熱く根強いマニアには群としての固有名詞がつくことがある。マンガ『タンタンの冒険旅行』シリーズもそのひとつで、1929年にベルギーの子ども新聞に連載が始まって以降、世界中に“タンタノフィル”と呼ばれる情熱的なファンを生んだ。ピョンとはねた前髪がトレードマークの少年記者タンタンが、愛犬スノーウィとともに世界中を旅し、事件に巻き込まれる。単行本は80か国語以上に翻訳され、全世界での発行部数は2億部以上。実写やアニメで何度も映像化されているが、このたび巨匠スピルバーグの初のアニメ作品として3D映画化された。

 原作24作品のうち、今回の下敷きとなったのはシリーズ中盤の「なぞのユニコーン号」「レッド・ラッカムの宝」「金のはさみのカニ」の3本。ノミの市で古い帆船の模型を手に入れたタンタンが、それ以降、怪しい影につけ回されるようになる。それはかつて大西洋で忽然と姿を消した“ユニコーン号”の模型で、中には秘密の地図が封印されていた──。タンタンの盟友で大酒飲みのハドック船長、兄弟でもないのに名前も顔もそっくりな国際刑事のデュポン&デュボンなど、ファンにはおなじみのキャラたちとの出会いも描きつつ、謎と波乱の物語を一気呵成に紡ぐ。

 監督がスピルバーグで製作がピーター・ジャクソンと、ハリウッドの大物ふたりが組んだことも天晴れだが、イギリスの若手の才能を端々に取り入れていることにも注目したい。脚本のエドガー・ライト、デュポン&デュボン役を演じるサイモン・ペッグニック・フロストの3人は、それぞれが監督・脚本・俳優をマルチにこなす新進気鋭のコメディ・メーカー。『ゾンビ』をパロディにした『ショーン・オブ・ザ・デッド』、田舎町に左遷された切れ者警官を描く『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』など、以前から徒党を組んで悪ふざけをしていた連中で、オタクやダメ人間を描いて笑わせる手腕は天下一品。とはいえまだまだB級インディーズとしてしか知られていなかった彼らを大舞台に引きずり出したのも、スピルバーグの抜け目のなさ。才能の大盤振る舞い、だ。(吉田正太)

【CDジャーナル 2011年12月号掲載】