Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

灼熱の魂

時代も場所も明示されぬまま、現在と過去の物語が並行して紡がれる。観る者には不親切だが、湿気と陰のある映像に惹かれてそのまま眺めていると、ある女の業に興味を持つ。現代の舞台は、カナダ。変人だった母を亡くしたばかりの双子の姉弟がそれぞれ「父を探せ」「兄を探せ」と、突拍子もない遺言を受ける。一方の舞台は、数十年前の中東の僻村。宗教のいがみ合いの中、自由と正義を信じ、強く生きていた若い女。異教徒との不義の子を孕み、村を追われ、そのうえ──。女の一生は、強く逞しいとともに、弱く哀れだった。が、“変わり者”で、“強くて弱い”女は,自らの死後、自分の産んだ姉弟に自分の過去を追体験させることで、運命の鎖をほどこうとする。報復や復讐、憎しみの連鎖を、これで終わりにしよう、と。姉弟にとっても観る者にとっても、辛い作業だった。しかし彼女が(または本作監督が)訴えようとしたことは、重く胸に残る。重いが、観るべき秀作。

【CDジャーナル 2008年05号掲載】