Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ファミリー・ツリー

葬式という非日常の場では、思わぬ出来事がいくつも起こる。親族の確執の表面化や、隠されていた真実の漏出。さまざまな出逢いや再会。本作では実際の死の瞬間も、葬式の様子も描かれてはいない。言わば物語全体が“死者を葬る儀式”なのだ。仕事一筋だった夫が、事故で昏睡状態に陥った妻の前で、これからは良き夫、良き父親となることを決意する。しかし医者は妻の死が近いことを告げた。反抗期の娘たちとは接し方すら分からない。同時に彼は、祖先から受け継ぐ神聖で広大な土地をどう処分するかという地域ぐるみの難題を抱えていた。また、妻が情を交わした別の男がいることも知った。物言わぬ妻、暴言を吐く娘たち、金に群がる親戚たち。だが葬式と同様、静かな混乱は徐々に収束してゆく。残された者はそれぞれに自分の居場所を整え直し、新しい生活を始める――。アレクサンダー・ペイン監督がジョージ・クルーニーを迎えて贈るヒューマン・ドラマの佳作。

【CDジャーナル 2012年10月号掲載】