Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ダラス・バイヤーズクラブ

まだAIDSが“ホモの疫病”“死の病”だと思われていた80年代半ば、HIVに感染したある男の実話。賭博と酒、麻薬と女のために生きる典型的なテキサス男で、“ホモ野郎なんてクソ食らえ”、のはずなのに。病院に担ぎ込まれたものの、金と権威に固執し、患者をモルモット扱いする製薬会社や医者、行政に見切りを付け、脱走。それはすなわち死を意味する──はずが、彼は無鉄砲な独学で、ときに麻薬で身につけた裏ルートを使い、外国からさまざまな新薬を密輸する。そして、その新薬を必要としている患者──主に“ホモ野郎”──に分け与え、だんだんと手を広げて商売にし始める。最初は純粋に“金儲け”のため、しかし次第に“憎しみや怒りに裏打ちされた何か”に突き動かされるようにして。話が話だけに人の死を描くシーンもあるが、印象的なのはいくつかの握手のシーン。反目していた者同士の、感謝や共感の握手──少し、泣いた。アカデミー賞を始め数々の主演/助演男優賞を受賞。当然。

【CDジャーナル 2014年09月号掲載】