Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

あなたとのキスまでの距離

かつてチェロ奏者を目指していた男が夢を諦めたのは、家族のため。高校の音楽教師という地味な仕事にも、妻と娘との平穏な生活にも、不服はない。だが英国からホームステイに来たひとりの少女により、男は自分の中の抑圧に気づく。少女は美しく、そしてピアニストとしての天賦の才能を隠していた。言葉でなく音楽で通じ合い、変化し、静寂の中に淡い官能が生まれる。監督D・ドレマスは前作『今日、キミに会えたら』で即興の台詞を重んじたドキュメンタリー風の手法が評価され、その繊細な空気感は本作にも残る。

【CDジャーナル 2015年03月号掲載】