Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ゴーン・ガール

そこそこ親しくなった相手の横で、ふと「この人、虚言癖がある」と気づいたときの背中をつっと冷たい汗が走る感覚、経験があるだろうか。概して相手は、快活で魅力的な女性だ。頭の回転も速く、場の空気を読み、有名人の知己も多く、周囲には楽しいことが溢れている。が、よくよく聞くと、彼女らはつじつまの合わない嘘をついている。その場に合わせ、息をするかのごとく自然に。自分にとって得な相手には媚び、損な相手は上手に仲間から排除していく。“虚栄心”といった浅い感覚ではなく、なんの濁りもない本能としての“虚言癖”。「この女、怖い」とうっすら感知した筆者は、気づけば仲間から排除され、なぜか悪者になっていた。こんな“人気者”は、パーティの華には相応しい。が、同僚にはしたくない。ましてや恋人には──なにを書いてもネタバレになるので、個人的な経験を記してみた。“生まれ持った本能の闇”をあぶり出す鬼才、D・フィンチャーのサイコ・サスペンス。◎

【CDジャーナル 2015年04月号掲載】