Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

おやすみなさいを言いたくて

あらかじめ葬儀を済ませた後、体に爆弾を巻き付け、自爆テロに出向く若いムスリムの娘。それに同行取材する戦場写真家の女。冒頭シーンは衝撃的だ。前者は当然爆死し、後者は怪我を負いつつ生き残った。母国で待つのは、妻の、母の死におびえ続ける夫や娘。写真家は、家族の懇願もあって、一度は仕事をやめることを決意するが──。止むに止まれぬ使命感と、それによる家族の崩壊、そして再生への試み。一言で言えば"PTSD"の物語だが、そこには一言では片付けられない、社会と人間の根深い悲しみがある。

【CDジャーナル 2015年07月号掲載】