Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

毛皮のヴィーナス

ロマン・ポランスキー監督による完全な二人芝居。オーディションに遅れてきた下品で我が儘な女優。ただただ早く帰りたい演出家。しかし強引に演技を始めると、彼女はすべての台詞をそらんじており、19世紀の教養ある貴婦人そのものに。作品に対する独自の解釈──たとえば演出家にとっての崇高な古典を、彼女はSMポルノだという──に翻弄されつつも、演出家はいつしか彼女の創る劇中劇に飲み込まれていく──。仏語の素養がないので、娼婦と貴婦人を瞬時に演じ分ける女優の、本当の凄さ分からないのが悔しい。

【CDジャーナル 2015年07月号掲載】