Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

人生は小説よりも奇なり

39年間連れ添った爺ちゃん二人が、周囲の祝福の中、結婚した。同性婚もここまで社会に馴染んでいるのか米国は──と思えばやはりそうでもなく、カトリック系の学校に勤めていた片方がそれで職を失い、ついで家も失う。とりあえず甥や友人の家で別々に居候を始めるが、“他人と共に暮らす”ことの煩わしさはときに愛を上回り──。世に子孫を残せないカップルが残すものは、愛のある言葉や若者への影響。クライマックスとなりうるシーンはすべて省略、その間にある日常の風景を細やかな筆遣いで描き、人生を奏でる。良作。

【CDジャーナル 2016年09月号掲載】