Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

ミモザの島に消えた母

西フランスの慎ましく美しい景色の中にあった、おぞましい人間の業。人生も後半にさしかかった男が、幼い頃に亡くした母を想う。母はただ「海で溺れて死んだ」とだけ聞かされ育った。躊躇する妹を巻き込み、故郷の島に戻ってゆっくりと過去を掘り起こす男。最後に露わになったのは、30年もの間語られずにきた“家族の偽り”だった──。セリフで語られるものは少なく、真実は何気ない情景や人々の表情から読み取らねばならない。祖父母、死んだ母、その息子と娘、さらに孫の四世代にわたる嘘と隠し事が物悲しい。

【CDジャーナル 2017年02月号掲載】