Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

オマールの壁

未だ混乱の最中にあり、ただ穏やかな暮らしを望むためだけにも銃や暴力が必要な中東・パレスチナ。親友の妹を想いつつ、パン作りに精を出して真面目に生きている若者ですら、壁に囲まれたその街から逃れ出ることはできない。誰かを信じると裏切られ、信じないなら殺される──イスラエルの秘密警察に捕らえられ、内通者となることを強要された若者が取った行動、愛している人のために、嘘の上に築かれた幸せさえも壊すまいとするその姿──無音で流れるエンド・ロールにさえ胸が痛んだ。アカデミー外国語賞ノミネート。

【CDジャーナル 2017年03月号掲載】