Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

永い言い訳

すでに邦画界での評価を固めた西川美和が執筆、直木賞候補となった小説をみずからの脚本・監督で映画化。人としても夫としても最低の部類に入る小説家の男が主人公であるあたり、師匠筋に当たる是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』と共通する。が、是枝が“この男のこんな部分がダメだ”と比較的明確に描くのに対し、西川の紡ぐ物語はどこか揺れ続け、“この男が何がダメか”が見えてこない。“正解”を求めがちな男性と、“曖昧さ”を許容できる女性の違いか──。本木雅弘演じる主人公は、突然の事故で妻が凄惨な死を遂げたまさにそのとき、自宅で愛人との情事に耽っていた。世間的には悲劇の男として振る舞うものの、実のところ“悲しみ”を感じられない辛さ、未熟すぎて自身への言い訳すらできないことへの苛立ち。胸の内で入り乱れる憔悴、諦観、激昂。演出意図の見えやすい『ディア・ドクター』や『ゆれる』よりも、“正解の見えない”こちらのほうが西川の本領、描きたかった世界なのかも。

【CDジャーナル 2017年05月号掲載】