Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

湯を沸かすほどの熱い愛

一年前に家出した夫を待ち続け、娘とふたり静かにくらす妻が、突然末期ガンの宣告を受ける。いくつかの“死ぬまでにやるべきこと”を決めて実行する彼女と、さまざまな人との出会いや再会──。監督は自主映画『チチを撮りに』で国際的な評価を得た中野量太。物語の細部が十分に胸を打つので、“ガンと余命”というベタな大枠はいらない、というか、死なせないであげてほしい(……と思わされるのは演出の賜物か)。宮沢りえの穏やかで、しかし時に壮絶な演技はさすが。脇役陣も充実、優しく弱い人々の絆を感じられる良作。

【CDジャーナル 2017年05月号掲載】