Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

手紙は憶えている

目を覚ますたびに妻の姿を探し、もう亡くなっていることを知らされて落胆する──認知症を患って施設で暮らす90歳の老人。ある日彼は友人に一通の手紙を託された(手紙なら、記憶を失ってもまた思い出せる)。記されていたのは、彼らがアウシュビッツで家族を殺された過去と、今も身分を偽って生きているその犯人。人生の締めくくりを意識しつつ、老人は静かな復讐の旅に出る──。復讐の残酷さ、という言葉を意識してラストまで観てほしい。描きつくされたかと思われていたホロコーストの、意外で新たな一面が見える。

【CDジャーナル 2017年06月号掲載】