Shota’s Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

この世界の片隅に

“男目線”で怒号や爆撃音を響かせる戦争映画とは異なり、“女こども”の目線でその後ろに地続きにあった人々の生活を描いている点で、『火垂るの墓』を思い重ねる人も多いだろう。絵を描くことだけが得意でどこかボンヤリしており、18歳で広島から軍港の街・呉に嫁いだ主人公・すずの目を通して物語はつづられる。画風は淡々としているが漫画原作者こうの史代、監督・脚本の片渕須直ともに膨大な量の戦時資料にあたっており、人々の生活や軍艦の動向など、かなり正確。しかし強き者が掲げる“正義”や“国の尊厳”は是とも非ともせず、ただその背後にいた弱き者たちの静かな日常を、丁寧な色合いで表現した。「非常時のために床下に備蓄しておいた芋が、空襲でいい具合に焼けたから食べよう」という短いシーンなど、秀逸。作者が意図しているかどうかは分からないが、ラスト数シーンは、『火垂るの墓』で味わったやるせなさに対するひとつの救いの提示であるように感じる。

【CDジャーナル 2017年11月号掲載】